八目 迷(著)
17歳の春休み、父親の説教に嫌気がさして、東京から中学時代までを過ごした離島、袖島へ家出した船見カナエ。
故郷である袖島には祖母と妹が住んでおり、高校から東京の父親のもとで暮らしていた。
そんな兄に妹のエリはきつくあたる。
実家に帰るや早々に喧嘩をし、カナエは家を飛び出してしまう。
海沿いをなんとなく歩いていると、堤防には幼なじみの保科あかりがいた。たわいのない会話を交わし2人。
しかしカナエはあかりの瞳に暗い気配が漂っていることが気になっていた。
その後、1人で島を散策するかなえ。
人気のない場所で廃集落となった場所を見つける。
そこにあったのは祠の石だった。
夕方6時を告げるチャイムのグリーンスリーヴスの音が耳に届いて、祠の石に触れた瞬間に、カナエの意識は途切れてしまう。
目が覚めると目の前の状況は変わっていた。
そして、あかりの兄であり、カナエの恩人でもある彰人がなくなっていたのだ。
さらに日付は4日進んでおり、カナエは四日間の意識が空白になっていた。
翌日にカナエはあかりよりその原因を告げられる。
“ロールバック現象“…いわゆるタイムリープが起きたと。
つまり意識だけが未来へと飛んでいたのだ。
そしてあかりから死んだ兄を救ってほしいと頼まれる。
カナエはタイムリープを利用し彰人を救うために行動する。
だがそこにはカナエの知らない秘密があった。
過去を、そして未来を変えるためにカナエは奔走する。
この作品はよくあるタイムトラベルものであるが、タイムリープの使い方が斬新である。
4日進んだ後は1日進んで2日前に戻ると言う設定で、少しずつ未来と過去がつながっていく展開が面白い。
間章では幼なじみのあかりの過去の想いが描かれており、最後にその真実が全て明かされるが、甘い初恋とともに、辛くて苦い過去に胸が締め付けられる気持ちになる。
幼なじみ2人のスウィートでビターな青春ストーリーである。