霊感商法で詐欺を働く冴昼が失踪した

詐欺師は天使の顔をして


詐欺師は天使の顔をして

斜線堂 有紀(著)

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斜線堂 有紀(著)

非能力者にしか動機がない殺人の容疑で罪を着せられた冴昼。

子規冴昼総合相談事務所。

ここは霊能力者である子規冴昼の事務所ではあるが、島の冴昼は3年前に失踪してしまい、現在いるのは相棒の呉塚要であった。

冴昼と要はかつてコンビを組んでは、TVやマスコミに出てて、霊能力者として様々な奇跡を起こし、多くの事件を解決してきた。

冴昼は千里眼を持ち、人の心を読み、未来予知までできる完璧な霊能力者と言われていた。

しかし、それらは全部嘘だった。

パートナーである要は共犯者であり、彼らは世間を相手に壮大な詐欺を働いていたのだ。

全てがうまくいっていたが、その能力を買われ、次第に犯罪捜査に利用されてしまう。

そして、とある連続殺人事件を解決した後、冴昼は失踪してしまったのだ。

それから3年、要は諦めずに冴昼を探していたが、死んだと言う言葉が頭をよぎり始めていた。

と、その時事務所の電話が鳴り、相手は冴昼であった。

わずかの会話と、聞き覚えのない住所を伝えられ、通話が切れる。

要は別の男に伝えられた通り、事務所の裏路地にある電話ボックスから電話をかける。

すると要はいつの間にか知らない場所にいた。

何もかも違和感だらけの街…

その理由は、その街の住人は全員が超能力を使って生活していたのだ。

不思議な街で要は冴昼と再会を果たす。

だがなぜか冴昼は、この街で殺人の容疑者となっていた。

冴昼を救うため要は調査に乗り出すが、2人は経過した時間までもが違っていた。

謎だらけの世界で詐欺師が動き出す…

斜線堂さんのミステリー作品だ。

まずキャラクターの造形と設定が素晴らしい。

2人は詐欺師であるのに、やっていることは探偵と変わらずに、時に人助けまでをしている。

異世界を飛び続ける冴昼だが、その世界は超能力や死者が蘇るのが当たり前の世界で、当たり前と言う価値観や概念を、全てひっくり返してくれるような世界で展開されていく物語はとても面白い。

この二人の絶妙な関係も良く、お勧めできる作品である。

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