その後のラブライブ

ラブライブの続きを勝手に考えてみる~EP-010 君の名は...④(67)


ラブライブの続きを勝手に考えてみる~EP-010 君の名は...④(67)

音乃木坂図書室 司書

「みんなうちやで。なんだか今、噂されてた気がするんやけど」と言って部室に入ってくる希。

「希ちゃん!」それと同時に凛と花陽は声を上げると、希のもとに駆け寄りベタベタしている。

まるでなついている子犬のような2人である。

そんな子犬2人の頭を優しく撫でまわす希も嬉しそうな表情をしている。

凛と花陽以外の4人も、まるで希の登場を待ち望んでいたかのような表情だ。

それにしてもそのタイミングを寸分の狂いなく、計ったかのように現れた希であった。

そこへ真姫が声をかける。

「希、今日はどうしたの?いきなり現れたからびっくりしたじゃない」

「いやなぁ、カードがうちに告げたのよね。今日、音乃木坂に行くべきやって。だから来てみたんやけど」

カードが告げると言うのは、希の得意なタロット占いによるものであるが、それが当たるかどうかは定かではないが、今日に関して言えば、まさにその通りだった。

とにかく、すごいタイミングで現れたことに間違いない。

「それで今日は何の打ち合わせしとるん?そういえばみんなの新しいユニット名は決まったん?」

なんと用意周到というか、かゆいところに手が届くというか、まさに今希に頼りたかったことを、希は口にしたのである。

これもカードによるお告げなのか、その真相は定かではないが、皆が希に縋るような視線を送る。

「希、見ての通り全然…もうお手上げね…」

真姫は両手を上げて首を振り、ややオーバーリアクション気味にお手上げと言う仕草を見せる。

「あれ、だんご6姉妹やないの?」

「希…それはないんです…」海未がすぐに否定した。

そんな6人の反応を楽しそうに、希は眺めては笑みを浮かべる。

そして6人は、そんな希が良い案を言ってくれるのを心から期待していた。

「まぁそんなことをやろうと思っとったよ。じゃあしょうがない。うちが考えてあげるよ」

と希が期待通りの言葉を口にした瞬間、6人は待ってましたと言わんばかりに喜びをあらわにする。

さすがは皆の頼れるお姉ちゃん的存在の希である。

「ちなみに、そんなこともあるかと思って、事前にえりちとにこっちからも、みんなのユニット名のアイディアを預かっておいたんやけど、聞く?」 

「いや、それは別にいいわ」真姫がすぐに言った。

そういえば絵里とにこちゃんもそんな戯言を言ってたっけ…と思い出す真姫。

あんまり、というか全然期待できないだろうし、そもそもあの2人のアイディアに頼るなんて、とらぬ狸の皮算用もいいところだと真姫は思っていた。

あの2人のセンスはBiBiのユニット名を決めるときに充分認識していた真姫は、希の提案を即答で断ったのだ。

「あぁ、ひどいんだ、真姫ちゃん。そんなこと言ったらえりち泣いちゃうぞ。それに真姫ちゃんの相棒のにこっちも怒ると思うよ」

「ちょっと!誰が相棒よ…はぁー…」あまり言い返すとまたいつもの、にこと付き合っているネタでいじられるとわかっていた真姫は控えめに言った。

そんな2人のやりとりをよそに、穂乃果は絵里とにこのアイディアが気になってしょうがない様子である。

「ねぇねぇねぇ希ちゃん!えりちゃんとにこちゃんのアイディアは何なの?教えて教えて」

穂乃果の言葉に希は笑顔で返す。

「オッケー、じゃぁ2人のコメント付きで発表するね。

「まずはにこっちの案からね」希はそう言ってスマホを見つめる。

6人は固唾を呑んで耳を欹てる。

全否定した真姫も、なんだかんだで気になるらしい。

「にこっちのコメントは“まったくしょうがないわね、しっかりしなさいよ後輩たち。

あんたたちに音乃木坂を託したのに、こんなんじゃOGになっても心配でうかうかしてらんないわよ。

まぁでもいいわ、偉大なる先輩であり、スクールアイドル部本部長であり、宇宙ナンバーワンアイドルであり、音乃木坂学院伝説の王子であり、BiBiのスーパーリーダーにして永遠の糸色ラブニコニのこの私が考えてあげるわ。

感謝なさい“だって…てゆうか、にこっちのコメント長!」

希が今、皆の気持ちを代弁するかのように言ったが、長い前置きはやはりにこだなと皆が思っていた。

この場にいないのに、偉そうな態度で言い放つ、にこの姿が容易に想像できる位である。

「にこは相変わらずですね…それで、にこのアイディアはなんですか?」 海未が言った。

すると希はみんなの顔を一瞥して再びスマホを見つめる。

「にこっち発案のユニット名は… μ‘Girls。μ‘s のμ にガールズを出してμ'Girlsだって。 またにこっちからのコメントで、“これにしなさいあんた達!これで決まりよ真姫、わかったね!“だってさ。 にこっちにしてはええ方やないかな」

にこの案は割と普通であり、どうやらまともに考えてくれたのがうかがえる。

BiBiのユニット名決めの時は、一体何だったのだろうと思う位である。

その理由は単純に自分がいるかいないかであり、また自分がいると、自分中心に考えてしまうからなのだ。

真姫が言う。「まぁにこちゃんにしたら、すごいまともって言うが、予想外のアイディアだけどなんで私だけ名指しなのよ?」 

訝しいと言うような顔をする真姫。

だがそれは2人が付き合っているからでしょうと皆が心の中で思っていたが、誰も口にはしなかった。

しかし1人だけ、それが顔に出てしまっていた。

真姫が詰め寄る。 「ちょっと穂乃果、何よその顔は!?」

「えっ?何でもないよ、気にしないで。にこちゃんとまきちゃんが付き合っているからだなんて思ってないから」

「いや…思いっきり口に出して今言ったわよね!」

「聞き間違いじゃない?そんなことより希ちゃん次!えりちゃんのアイディアプリーズ!」

しらばっくれるように穂乃果は希へと振る。

笑いながら希は言う。 「オッケー、次はえりちゃんね。

まずはコメントから。“恥ずかしいけど一生懸命考えたので、よかったら私のアイディア使ってね“だって。

絵里の発案のユニット名は…」いい淀むように言葉を切る希。

それを見てことりが催促する。 「えりちゃんの案は何?」

意を決するように希は口を開く。「ボルシチ・マトリョーシカ…だそうです…」

絵里のアイディアに、ことり、真姫、海未、真姫、花陽は“えっ…?“と言う反応を示すが、穂乃果と凛の2人は違う反応を見せる。

「ボルシチ・マトリョーシカってすごいかっこいい!」

「うん、すごい良い感じね。言葉のバランスが良いっていうか…さすが絵里ちゃんや!」

意味を全く理解していない2人は絵里のアイディアが気に入ったらしく、2人で絵里を褒め称えていた。

「えっと…えりちの案でいいの…!うちは考えなくてもいい?」 すぐに否定し真姫が言う。

「いいわけないでしょ。ナイナイナイ!ボルシチ・マトリョーシカなんて意味不明じゃん!希の案をお願いします…」

「えっ、ないの?かっこいいと思ったけど…」穂乃果の言葉に真姫はすぐに言い返す。

「ないわよ!穂乃果と凛はすまほでググってみなさいよ。ボルシチとマトリョーシカで!
はぁー…絵里は頭いいくせに、一体頭の中どうなってるのよ…」

ため息まじりに行巻に希が言う。

「ふふふ…まきちゃん、本当にえりち泣いちゃうで。それじゃあ、うちの案はねぇ…ミュージックμ‘sicforeverなんてどうかな!ミュージックのMUSをμ‘sにしてμ‘sicforever」そこ

にすまほでググっていた穂乃果が声を上げる。

「えっ!なにこれ…ボルシチってロシアの郷土料理じゃん。それにマトリョーシカってロシアの民芸品でお土産として需要が高いって…
ボルシチ・マトリョーシカって、ただのロシアじゃん!」

「ほんとだにゃー…なんだこのユニット名は…えりちゃんの第二の故郷のロシアだにゃー…ひどいにゃん…」

ググった結果意味を理解した2人は先程まで良いと嘘のように否定していた真姫は改めて絵里のセンスのなさを痛感していた。

BiBiの時と同様結局ロシアだけの絵里。 どうしてあんなに可愛くて頭も良いのにこんなセンスなのだろうか真姫は不思議に思っていた。

そして希の提案した相手は、皆が納得してうなずくものであった。

続く

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