大澤 めぐみ(著)
進学校に通う郷津香衣。
彼女は高校に入ってから全然友達ができなかった。
自分でも気づいていなかったが、香衣は人見知りだったのだ。
だが一人だけ側に近づいてくる子がいた。
金髪の美少女峯村セリカは、唯一友人と呼べる存在だった。
しかし香衣はセリカの携帯の番号も知らない。
これは友達といえるのかと思っていた。
ある日の放課後、香衣はセリカの付き添いで教室に残っていた時、好きな人ができたかもと打ち明けられる。
その相手はサッカー部の諏訪隆生。
その名に香衣は反応する。
隆生は香衣が付き合っていた人なのだ。
そして今もまだ彼氏かもしれない。
中学時代、高校入試のため、香衣は彼に毎日勉強を教えていたのだ。
半年もの間、二人きりで一緒で、それはいつしか付き合っているものと認識していた。
だがそれは思い違いだった。
確かに彼は香衣のことが好きだったかもしれない。
しかし、それ以上でも以下でもなかったのである。
そんな香衣は学校内で唯一不良といわれる丸山龍輝という少年と付き合うことになり...
これは4人の少年少女の、近くて遠い別れを描いた青春群像劇である。
部隊は長野県の安曇野と松本が中心となっていて、自分も住んだことがあるので、あの大自然に囲まれた街の雰囲気を、作品を読みながら頭で鮮明に描いていた。
物語は、香衣、セリカ、隆生、龍輝の一人称で書かれており、それぞれのストーリーがピースとなり、1つの高校生活というのが描かれている。
生い立ちや育った環境等、読み進めるにつれて、4人のことがわかっていくが、結構衝撃的な設定であったり、思わず重ねてしまう部分があり、心が動かされる。
そこには大小あれども別れというテーマが常に見え隠れしている。
4人の心理模写も上手く表現されていて、必ずしもハッピーエンドではないものの、切なくも心温まるものもあり、とても良い作品だろう。