音乃木坂図書室 司書
穂乃果について行き電車に乗ること数10分。
9人がついた場所はディズニーシーであった。
まさか穂乃果が先導してきた場所がディズニーとはつゆ知らず、皆が少々驚いている。
途中で真姫は行き先に気づいたらしく、気のせいかテンションが上がっていることにみんなが気づいていた。
遊園地が大好きな凛はあからさまに喜んでいる。
かわいいものが好きなことりもうれしそうである。
とゆうか全員がテンションが上がっていることに間違いない。
それほど、ディズニーは世界中で愛されており、このテーマパークは日本が誇る素晴らしいものなのである。
そんな場所に仲の良い9人で来たのだ。
必然とテンションは上がると言うものであろう。
時刻はもうまもなく開門となる9時前であるが、すでに入場ゲートには長蛇の列ができていた。
9人も入場ゲートへと向かうが、やや不安そうに花陽がつぶやいた。
「お金足りるかな…」
学割が効くとは言え、入場料は高校生にしたら決して安くは無い。
それに加え、園内での食事、お土産代を考慮すれば、少なくとも10,000円以上は持っていたいところである。
バイトもしてない花陽の不安は当然だが、それをかき消すように凛が言う。
「大丈夫女かよちん。真姫ちゃんがいるから安心や」と言って笑顔を見せる凛。
さらににこも言う。
「そうよ、西木野バンクは無利子無担保で、上限なしに借り入れすることができるんだから安心なさいな」
「ちょっとあんたたちね… 人を銀行みたいに言わないでくれる?」
しかめ面で西木野バンクが言った。
だが実際、それができてしまう真姫は、別格のお嬢様である。
そんな会話の中、穂乃果はカバンをごそごそ漁って、何かを取り出し、皆に見せつけた。
「トゥルルトゥルルゥー!ジャジャーン!みんなこれ見て!」
まるで4次元ポケットから、秘密道具を取り出した猫型ロボットかのように、効果音を口にした穂乃果の手には、なんと入園パスポートが6枚握られていたのだ。
「えっ、すごい穂乃果ちゃん。それどうしたの?」
目を輝かせながら花陽がたずねる。
「ほら、私の家は昔からある和菓子屋でしょ。だから近所の人や古くからの付き合いの人とか、後は町内会とかでいろいろもらったりするんだ。6枚あるから… 1人3分の1の料金で入園できるよ!」
「うわぁ、ほのかちゃんありがとにゃー、うれしいにゃー!」
そう言って凛は穂乃果にだけ抱きつく。
にゃーにゃーと言いながら絡む隣の喉を、まるで猫を可愛がるように撫でる穂乃果。
この2人もμ‘sの三バカを代表する2人(真姫が勝手に言ってるだけだが)なだけあり、実に仲が良い。
そこへ希が言う。
「そうやね、家とにこっちはバイトしとるし、チケットは自腹でええよ。ねっ、にこっち」
その提案に、にこも文句もなくうなずく。
「後は真姫ちゃんもかな。だから他の6人でそのチケット使えばええんちゃうかな」真姫もうなずく。
「オッケー、じゃあ行こう。私シーは来たことなかったから、来てみたかったんだよね!」
「私もです。ずっと行きたいなって思ってたんだ」
穂乃果と花陽がそう言うと真姫が反応した。
「しょうがないわね。それじゃあ私が案内してあげるわよ。私は何回も来たことあるから」
とても楽しそうな顔で言った真姫に海未が言う。
「何回も来てるって、さすが真姫ですね。でも真姫がディズニー好きだったとは意外でした」
「ち、ちがうよー海未…うちのママが好きだから、よく付き合いで一緒に来てるだけだから…」
恥ずかしそうに否定する真姫に、全員が素直じゃないなぁと思いながら笑顔を浮かべる。
「そう、それじゃあ案内してあげるから、みんなついてきなさい!」
意気揚々と入場ゲートへ向かう真姫に、絵里が笑顔で言葉を漏らす。
「違うとか言いながらウキウキしてるんじゃないの」
「そうよね、真姫ちゃんすごい楽しそう」
希も言った。
かくして9人はこの日、ディズニーシーで遊ぶことになったのである。
メンバーの半数以上は初めての来園であり、ハイテンションであった。
しかしその中でもみんなを案内するといった真姫は、他の誰よりも楽しそうだった。
入園と同時に真姫は全員にダッシュを促し、向かったのはトイストーリーマニア。
行列必至のアトラクションだ。
思いっきりアトラクションを堪能する真姫。
「次はダッフィに会いに行くわよ!」
みんなを誘導する真姫。
ダッフィーと悪魔の人形キャラで、一緒に写真が撮れるのだ。
ダッフィーに抱きつき満面の笑顔の真姫。
そのままの流れで9人はお土産ショップへ。
「ねー見てみて!ジェラトーニのぬいぐるみ! やばっ...めっちゃかわいい...」
と言って真姫はそのまま購入。
ぬいぐるみを抱きしめ、ご満悦な様子の真姫。
さらに…「それは混むからファストパス出しておいて、あっち先に行くわよ!」
ディズニーシーを誰よりも満喫する真姫。
案内と言うより、もう自分が行きたい所へ行っているだけである。
そして時刻は昼過ぎ…穂乃果がお腹すいたと騒ぎ出したので、真姫はみなをレストランへと案内した。
「それじゃあここでお昼にしましょう。このレストランはブッフェだから穂乃果と花陽も満足でしょう。でも2人は食べすぎないようにね」
と言う真姫の言葉も虚しかった。
忙しなく席を立ち上がり、暴走する穂乃果と花陽。
食後はいつも通り食べ過ぎて、苦しいとうめく2人の姿があった。
2人に呆れる7人。
さすがの海未も何も言う気を失ったらしく、ひきつった笑みを浮かべるだけだった。
そしてその後もノリノリの真姫の案内で園内を回り、楽しむ9人。
だが1カ所だけ真姫が素通りしている場所があった。
それを穂乃果が指摘する。
「ねー真姫ちゃん、これ行こうよ。私、これ乗りたい!」
穂乃果がパンフレットを指差して言ったのは、タワーオブテラーだった。
それはディズニーシーで一番怖い落下型アトラクションである。
「そ、それは…危ないからやめたほうがいいですよ…」
「真姫ちゃん何で敬語…?えー、行こうよー!」
「いや…ここから遠いし…」
「えっ、あれだよね?すぐ近くじゃん」
2人の会話に希がツッコミを入れる。
「真姫ちゃんタワテラ怖いんやろうー?」
「そっ、そんなわけないでしょ!いいわ、いこうじゃないの!」
強がっているが明らかに動揺が見て取れる。
しぶしぶ真姫は皆を連れてタワーオブテラーへと向かった。
そして1時間後…真姫と花陽はグロッキーであった。
真姫に至っては涙を流している。
希が言う。
「もう…怖いなら素直に言えばいいのに」
「だって...うぅっ...怖かったよ…」
変なプライドが邪魔をして、素直になれない性格なのはみんながわかっている。
そんな真姫はにこに手を引かれて歩いていた。
しばらくして、その後も真姫の案内により園内を堪能する9人。
途中でμ‘sとばれることが多々ありながらも、楽しい時間は過ぎて行き、あっという間に夜となっていた。
9人は水上での演出を見るために、真姫お勧めの場所へと移動した。
「少し離れてるけど、この場所が1番よく見えるの」
もう、最初に否定していたのが嘘かのように、ディズニーシーが好きなのを隠そうともせず、みんなを自分のお気に入りの場所へと案内した真姫。
周囲にはカップルが多く、静かな場所で、海から吹き付ける潮風が気持ちの良い場所だった。
ここでショーを楽しむ9人。
花火も打ち上げられて、美しい演出に9人全員で感嘆の声をあげていた。
今日、また1つ、9人での大切な思い出を作った。
この一瞬がこの時が彼女たちにとって全て大切なのである。
気づけば9人は自然と手をつないで、夜空に輝く美しい光を見つめていた。
続く