音乃木坂図書室 司書
希の提案に待ってましたと言わんばかりの3人である。
その様子は、まるで最初から自分たちで決めるつもりはなかったかのような反応だ。
だがそれも無理はない、なんといっても希はμ'sの名づけ親なのである。
3人が、希がそう言ってくれるのを心の中で期待していたとしても不思議ではないだろう。
そこへすかさずにこが食いつく。
「何か良いアイデアがあるの希?」
少しじらすかのようにして、希は答える。
「う~ん、そうやねぇ…アイデアはたくさんあるんやけど、3人にぴったり合ったユニット名となると、何がいいかなぁー…」
期待するような表情で希を見つめる3人。
まるで神頼みをしているかのようである。
「よし、チョコレート・ニコニーズ・マーライオンにしよう!」
希の口から出たユニット名に3人は言葉を失う。
それはただ単に3人のアイデアを1つにしただけである。
ポカーンとする3人を見て、希は腹を抱えて笑っていた。
「ちょっと希、さすがにそれはないわ…」絵里が否定する。
同様ににこと真姫も否定の言葉を口にする。
だが同時に、それは自分のアイデアを否定しているのと同じようなものである。
「ごめんごめん冗談やって。3人のアイデアが面白くて、ついいじりたくなっちゃって。
絵里、にこ、真姫でチョコレート・ニコニーズ・マーライオン。アハハハハ…」
「もう、真面目に聞いて損したじゃないのよ」
自分のアイデアをいじられて少々不満顔の真姫であったが、もともとは自分のまいた種である。
そこに希が気を取り直したかのような真剣な表情で言う。
「3人のユニット名は…BiBiやで!」
突然真面目にユニット名を言った希。
冗談からの切り替わりの早さに少し戸惑う3人。
やがて少しの間の後ににこが言う。
「びび…ずいぶんとシンプルね」にこに促されるように絵里も続く。
「そうね。ビビ…でも響きは良いわね」
確かに今までの長ったらしいかったり、わけのわからない3人のアイデアに比べると、と地ほどの差がある位シンプルだ。
逆にそのシンプルが故のインパクトの強い。
「アルファベットでB,i,B,iでビビ。3人のユニット名はBiBiでどうかな?」
「アルファベットで並べると恰好いいわね。
しかも大文字と小文字で組み合わせるあたりはさすが希のセンスよね。BiBi…このネーミングに何か由来はあるの?」
真姫が問う。
「わかったわ!何かこうビビビビーってきたみたいな感じ!?」
にこの発想は単純であった。
だがその通りであった。
「そうやで!鋭いやんかにこっち。そう、ビビットきたから3人のユニット名はBiBiにしたんや」
BiBi…単純ではあるがわかりやすくインパクトのある名であった
そして希はBiBiの由来を仔細に語りだした。
「あのなぁ真姫ちゃん。学外でのユニットを始めるって言って一番最初、うちも誘ってくれたやんか。
あれな、すごい嬉しかったよ。でもな、絵里ちとにこっちと真姫ちゃんの3人の組み合わせを見た瞬間にビビットきたんよ。
それこそ電流が走ったみたいにね。これはうちを入れての4人じゃなくて、この3人が最高だと思った。
この3人なら間違いなく輝けるって確信したんよ。だからうちはこのユニットに参加するのを遠慮したいんや」
希は3人に対しての思い、そしてBiBiのユニット名の由来を伝えた。
きっと心の底では自分も一緒にやりたいと思っていただろう。
だが希は自分が入らないで、この3人でやるのが1番良いと思い、そしてその時の気持ちを込めてBiBiと名付けたのだ。
そんな希の想いを慮ってか真姫は言った。
「そんな…希がいても輝けるに決まってるじゃないの。ねぇ希、今からでいいから一緒に…」
と言う真姫に対し、希は首を左右に振って答える。
「うん、うちが言うんじゃない。カードがそう告げるんや。真姫ちゃんの気持ちは嬉しいよ、ありがとな。
でもμ'sの時もそうやったんや。だからうちは無し、3人でのユニットだよ。名前はBiBi。これでどうやろ?」
絵里とにこと真姫、3人は互いに顔を見合わせる。
そして言葉はなしに互いにうなずきあう。
「ありがとう希…さすがμ'sの名付け親ね。BiBi…最高じゃない、大賛成よ。ねぇ絵里!にこちゃん!」
「ハラショー希。私もBiBiがいい!」
「スリーマーライオンやチョコレート・ハラショー戦隊に比べたら段違いで良いわね!」 うるさいわよにこちゃん!ほっときなさいよ!」
「もう何度も言わないでよー、にこってば!」
すぐににこに文句を言う真姫と絵里である。
「にこちゃんの案とは、天と地の差ね、さすが希よね!」
「うるさいわよ真姫!とにかく希がそう言うなら仕方ないわ。今日から私たち3人はBiBiよ!」
言い争ったり、文句を言いやったり、楽しくおしゃべりしたりと、紆余曲折を経てようやくユニット名を決めることができたさんに。
こうしてμ's活動終了からわずか半月の期間で絢瀬恵理、矢澤にこ、西木野真姫の3人による新ユニット“BiBi“が誕生したのである。
ようやく一息ついたところで、希はこれとは別に気になっていたことを真姫に尋ねた。
「そういえば真姫ちゃん、6人での新しいユニット名は決まった?」
真姫は大きなため息と身振りをする。
「はぁー…それが全然…みんなで色々と考えてはいるんだけど…」
やっぱりなと思う希。 そこににこが割って入る。
「しょうがないわねぇ、私が決めてあげるわ!」
にこの発言を気に求めないで真姫は続ける。
「なんていうのかな…今までは希や絵里みたいに頼れる先輩がいたから良かったけど…6人だとワイワイ楽しくなって終わりっていうか、まとめ役がいないっていうか…海未が頑張ってくれてはいるんだけど…」
確かに真姫の言う通りである。
今の先輩3人、海未は真面目だからなんとかしようとしているが、性格的に前に出て引っ張るタイプではない。
ことりはあのふわふわとした物腰柔らかい性格で穂乃果に至ってはそんな状況であり、かといって年下の2年生3人もみんなそういうタイプではない。
その結果6人でのユニット名も未だに決まっていないのであった。
続く