スティーヴン・キング 著 矢野光三郎訳
それが始まったのは地方を襲った熱波、そして激しい雷雨だった。ロングレイク湖畔に住むデビットは妻と5歳の息子と暮らしていた。
天候は大荒れ、嵐となっていた。
嵐の後の被害は大きく、多数の倒木、電線もなぎ倒され、家屋にも被害が出ていた。
デビットは息子のビリーを連れ、スーパーマーケットまで買い出しに向かう。
だが嵐の影響か、異変が生じていた。
ラジオは受信せず、電話もつながらない。
スーパーで買い物をしたのでネットであったが、突然の警報音の後に濃霧に包まれ、その利用者に誰もが足を竦めていた。
霧の中に何かがいる…何かに囚われた人が居ると叫ぶ者たち。
さらわれた人が居ると叫ぶものたち…
不安に囚われみんながスーパー内にとどまることに。
そして恐れていたことが現実となってしまう。
そこで得体の知れない巨大な触手が人を襲う。
これは一体何なのか…政府が行う、とある計画に関係があるのか…
スーパー内で、人間が霧と謎の何かにより不安と不和になっていく…
表題作「ミスト」を始め一瞬でテレポートできる技術が発明された未来を描く「ジョウント」
1人の女性と出会った影響で、暴力性を表すような心理を描いた「ノーナ」等、5作を収めた短編集である。
昔見た映画が面白かった記憶があったので、原作を読んでみたが、面白いこと間違いなかった。
閉ざされた空間の中で、霧の中に潜む何かに怯える人たち。
逃げ出そうとする人、何かにすがるようにおかしくなっていく人…やがて対立するものも現れ、恐怖がもたらす混沌と言う人間の心理を描いている。
正体不明のモンスターが迫り来る恐怖以上にパニックに陥ったりしたときの人間の怖さと言うものが見事に模写されている。
ミストを始めどの作品も素晴らしい作品である。