音乃木坂図書室 司書
おいしいスイーツを堪能した2人は店を後にし、ツバサの元へ向かう。
2人に届いたメールは“新千歳到着しました。遅くなってすいません。“と言うなぜか敬語の文章だった。
今まであまり語られる事はなかったが、ツバサはかなり個性的な性格をしているのだ。
A– RISEとして活動している時も、その自由気ままな性格が故、よくメンバーの英玲奈が翻弄させられている事はみんながよく知っていた。
μ‘sで言えば、穂乃果と海未みたいなものだろう。
希曰く、ツバサをμ‘sメンバーで例えるなら、次のような公式が成り立つらしい。
(にこ+真姫) × 1\2穂乃果=ツバサ…
にこと真姫を足して穂乃果を2分の1かけたような性格、それがツバサとの事。
希はオイラーの法則より美しいと断言するが、絵里には希の言ってることがさっぱり理解できなかった。
とにかく2人はツバサが待っていると言う指定された場所へ到着するが…
「あれっ、ツバサおらんやんか」
待ち合わせ場所にツバサの姿はなかった。
周囲を見渡してもツバサはいない。
少しだけこの場を離れただけかもと思い、数分待つが、ツバサが現れる気配は全くない。
すると、再び2人のスマホにツバサからメールが入る。
“ミクミクのところにいます。初音ミクwith綺羅ツバサ“と言う文章とともにかわいいスタンプ、そして初音ミクミュージアムで初音ミク等身大パネルとツーショットの写真が送られてきていた。
「なんで移動しとるんやツバサは…」。
「初音ミクミュージアムって、ここと全然場所違うんじゃないの…」
思わず声に出してしまう希と絵里。
改めて、ツバサはかなり自由な性格なのである。
ふとスクールアイドルでライブをやることになって、A– RISEとともに音乃木坂で準備のための作業をしたときの英玲奈の言葉が2人の脳裏をよぎっていた。
“お互いのリーダーには苦労するな“と。
今になって、やっとその言葉の本当の意味を理解した2人であった。
その兆候は以前から見えていた
同じ大学の同級生として、それぞれ学部は違うものの、日ごろから一緒にいることが多い3人である。
行動を共にしていたて“あれっ?“と思うことが度々あった2人だが、今日はその疑念が確信へと変わったのであった。
どんなジャンルにおいても、天才と称される人物は、一般の人には理解し難い行動や、発言をしたりする人がいるが、ツバサも紛れもなく、そんな1人であった。
2人は移動し、ようやくの事初音ミクミュージアムへと到着する。
だが、グッズ売り場にはツバサの姿は無い。
2人は展示場をぐるっと1周まわるがツバサの姿はない。
ここにもツバサはいなかった。
「アカンって…ツバサ自由すぎる。…」。
思わずあきれた口調で希が言った。
絵里もつぶやく。
「はぁー…もうどこいったのよ。あの子は…」
そこに再びツバサから2人にメールが入る。
“お金おろすからコンビニにいるね“と。
はて2人はいつツバサとすれ違ったのだろうかと首をかしげる。
コンビニは最初の待ち合わせの場所に近く、2人がいるはずの初音ミクミュージアムより歩いてくれば、絶対にすれ違うはずなのだが、途中にそれらしき人はいなかった。
「ツバサは忍みたいな子やなぁ…」、そういった希とため息を吐く絵里は、仕方なく元来た道を戻っていく。
すでにツバサから到着したと言う連絡から30分近くが経っているが、いまだに合流できない3人だった。
ツバサがいるはずのコンビニに近づいた2人は、すぐ横にある椅子に座っているツバサをようやく発見する。
変装しているので、ぱっと見ツバサとはわからないが、それでも2人はすれ違った記憶はなかった。
一体どうやってここまで移動してきたのかと言う疑問が浮かぶ。
2人はツバサの元へ
足をぶらぶらさせながらグミを食べているツバサに希が言う。
「ツバサは本当にぱないね…」
希の声に反応したツバサが顔を上げる。
「あ、希!絵里!やっと会えた、どこ行ってたのよー。もう!」
「ツバサ、それはこっちの台詞だって、あなたと合流するのに、私と希がどれだけ行ったり来たりしたと思ってるのよ」
「ごめんごめん、怒らないでよ絵里。ほらグミあげるから、機嫌直してね。ね?私ね。このハリボグミ大好きなの。!」
「知ってる、大学でいつも食べてるじゃん」
「あー、まだ怒ってるの絵里?もう仕方ないなぁ、じゃあこれあげるから。北海道限定、ホワイトサンダーチョコだよ」
「えっ、なにこれ…あーおいしい…もっとちょうだい。!」
「はいどうぞ。好きなだけ食べて。ていうかさぁ、仕事じゃなくてプライベートで北海道来たの初めてだから、私テンション上がっちゃって。さっ行こっ!」
そう言って立ち上がるツバサ
ことの真相は、本当はメールより早く到着していたツバサ。
絵里のSNSのつぶやきを見て(パフェ食べてる時の)先に初音ミクミュージアムへ行き、写真を撮り、その後は2人を操るようにして楽しんでいたのだ。
もちろんその事実を2人が知る事はないが…絵里は簡単にチョコでつられていた。
希はそんな2人を見てわかりやすいなぁと思っていた。
そしてもう一つ、やっぱりツバサは自由な子だなと
そして、ようやく合流できた3人は電車で札幌へと向かった。
新千歳から札幌までは、直通電車で40分位だが、電車の中でもツバサのおしゃべりが止まらなかった。
ツバサは大のおしゃべり好きなのだ。
よくA– RISEでも英玲奈にうるさいと言われるらしいし、絵里と希も大学の入学式で会ったときにツバサがうるさいと言うことを実感していた。
そして今では放っておくと、ずっと1人でしゃべり続けるんじゃないかと言う位である。
アイドルとしてではなく、友人として接してみて、ツバサの知らなかった面がいろいろ見えてきた2人だった。
そんなツバサに対する2人の印象はと言うと、うるさいし、少し変わっているけど、人懐っこくてとても良い子と言うものだった。
一方でツバサの2人に対する印象はと言うと、希が巨乳の天才、絵里が金髪の美女と言うものだった。
A– RISEとμ‘sでライバルだったが、同学年であり、今は同級生の子の3人。
とても仲が良いのだ。
大学での日々の生活ではもちろんのこと、お互いの都合がつけば休みの日に遊んだりもしている位である。
そんなツバサはふと2人に尋ねる。
「ねぇ、そういえばさー、真姫ちゃんは最近元気してる?」
「えっ、真姫?多分元気だと思うけど、ツバサもこの前のラブライブの時あったでしょ。なんで?」
「うん、そうだけどさ。私、真姫ちゃん大好きだからさ。絵里、また私たちと一緒にライブしようよ。A– RISEとBiBiでしさ。そういえば希も新しくユニット始めたんだよね?何だっけ…えーっと…リリ…フランキー…だっけ…?」
「それは俳優さんやんか...Lily-Whiteだよ。リリホワ!」
「あぁ、リリフラじゃなくてリリホワはね!アハハハハッ」
「まぁええけど…にしてもツバサは元気だよね。昨日は大阪でライブだったんやろう?」
「うんそうよ。昨日、一昨日が大阪・神戸でのライブだったの。で、来週はフェスに出演して、その後はまた西日本でのツアーだね。危うくこの旅行の日もイベントとか予定入れられそうでさぁ、私マネージャーに言ったの。もし私この旅行を台無しにしたら、ツアーは中止よ!てね。その時のマネージャーの顔がもう面白くて。アハハッ」
「いやぁー、あまり笑い事じゃない気がするんやけど…まぁツバサらしいっちゃらしいけど。ところでツバサは何でそんなに真姫ちゃんが好きなん?」
「えっ、だってあの子めっちゃかわいいじゃん。いやμ‘sはみんなかわいいよ。でもその中でも真姫ちゃんは私の好みなのよ」
「そっか、真姫ちゃんモテモテやなぁ。だけど、真姫ちゃんにはにこっちと言う伴侶が居るからなあ」
「むむっ…にこちゃんめ…私の真姫ちゃんを返せ!」
「いや真姫はあなたのものじゃないんでしょうに…」。
絵里の冷静なツッコミはツバサの耳には届かなかった。
そんな会話で盛り上がりながら、札幌へ向かう仲良しの3人だった。