その後のラブライブ

ラブライブの続きを勝手に考えてみる EP-21青い空に夏の匂いを⑫(168)


ラブライブの続きを勝手に考えてみるEP-21青い空に夏の匂いを⑫(168)

音乃木坂図書室 司書

ラブライブの続きを勝手に考えてみるEP-21青い空に夏の匂いを⑫(168)
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ラブライブ! 2nd Season

ラブライブ! 2nd Season Blu-Rayより

音乃木坂の部室で打ち合わせをしている穂乃果に、再び雪歩からメールが届く。

“お姉ちゃんのお客さん、音乃木坂の校門まで案内しておいたから、後はよろしく。チャオ“と言う文章とかわいいスタンプが送られてきていた。

「えっ…なにその無責任さ…チャオじゃないし、はぁ…」

返信する穂乃果。

“いや、せめて校舎まで連れてきてよ。で、お客さんって誰?“

“私もう帰宅中。名前聞くのを忘れちゃった。テヘペロ、アディオス“

「何がテヘペロだよ。雪穂ってば…みんなちょっとごめん、すぐ戻るから続けてて」。

皆にそう言って、穂乃果は部室を後にした。

真夏の8月、外に出るだけで、汗が吹き出すような暑さであり、校門の先の道路のアスファルトは陽炎のように揺らめいている。

「こんな暑い中、お客さんを外に置いていくなっての、バカ雪穂...」

文句を言いつつ、穂乃果は校門へと歩いていく。

音乃木坂は広いため、校舎から校門までもそこそこ距離があり、穂乃果の額に汗がにじむ。

汗を拭う穂乃果の視界には校門の脇に立っている女性の姿が映っていた。

白いワンピース姿で帽子をかぶっており、スラットしたその姿は、遠目から見ても美しさがわかるものだった。

女性に近づく穂乃果は、最初誰だかわからなかった。

穂乃果が声をかけようとした。その時…

「ほのかちゃん!」先に穂乃果が声をかけられていた。

その声を聞いて、女性を正面から見た瞬間に、穂乃果の頭の中で懐かしい日々の記憶が一気に巡った。

そして改めて帽子の下の恵海顔を見た。

穂乃果は驚きを隠せなかった。

「…恵海ちゃん…?本当に…?」 

今自分の目の前に恵海がいること、今起きていることがすぐには理解できない穂乃果。

そんな穂乃果を恵海は白くて細いきれいな腕で、包み込むように抱き寄せた。

「久しぶり穂乃果ちゃん…ずっと会いたかったよ…」、

その瞬間、穂乃果はみるみるうちに目元が熱くなり、大粒の涙がこぼれていた。

大好きな恵海、姉のように慕っていた恵海が今自分の目の前にいる。

それを考えただけで、穂乃果の涙腺は止まることがなかった。

「恵海ちゃーん…お姉ちゃん…うわぁぁぁん...」

恵海の胸元で大号泣の穂乃果。

最後に会ったのは、穂乃果が中学一年生の時で、約5年ぶりの再会である。

5年の間に穂乃果は18歳、高校3年生となり、スクールアイドルとして大人気の存在になっていた。

恵海もまた大学生となり、大人の女性となっていた。

だが、今2人の中にあるのは、あの懐かしい日々、短い期間だったが、共に過ごした小さい頃の記憶であった。

毎日一緒に遊んだこと、学校でのこと、恵海に教えてもらった様々なこと、楽しかった思い出、そして別れの日…

全てが昨日のことかのように鮮明に蘇っていた。

しばらくして、ようやく落ち着いた穂乃果が鼻を啜りながら言った。

「ごめん、ここは暑いよね…あっち行こ」

穂乃果の背は汗で湿っている。

恵海も帽子を被っているが、額から汗が見える。

穂乃果は恵海の手を取ると、校舎の脇にある桜の木の下のベンチへと移動した。

ここは大きな桜の木の日陰となっている。

2人でベンチに腰をおろし、穂乃果が口を開く。

「いきなりでびっくりしたよ。恵海ちゃん。雪穂からメールきて、お客さん連れてきたからって校門に来てみたら、まさか恵海ちゃんがいて…嬉しすぎて言葉にならなかった」

「うん私もだよ。穂乃果ちゃんに会えて嬉しかった」

優しい笑顔で恵海は言った。

さらに続ける。

「あの動画見たらもう我慢できなかった。夏休みの間に何とか穂乃果ちゃんたちに会いたいと思って来ちゃったんだ」

「あぁ、動画見てくれたんだ… μ‘sicforeverのPVあれね、恵海ちゃんへのメッセージだったんだ」

「うん、見てすぐにわかった。だって写真も歌詞も全部私の思い出だったから…あれ見て私涙が止まらなかった…本当はね。μ'sの時から見てて、いつも応援してたんだ。でもあの頃は遠くにいたから会いに来れなかったんだ。…」

恵海は穂乃果達と最後に会って以降は北海道へ、高校時代は九州で生活をしていたのである。

そして今は京都で一人暮らしをしながら大学へと通っているのだ。

「そっか、あの後もいろいろなところに引っ越してたんだね」

「うん。連絡することもできたけど、そしたらあいたくて我慢できなくなりそうだったから…でも大学生になって、1人で生活始めて多少の余裕もできたから、あのPVを見て思わず東京に来ちゃったの。この街は私の中で今でも大切な場所だから」。

恵海にとってはわずか数ヶ月、子供の頃に過ごしたアキバの街

だが、その短い時間は子供にとってはとても長い時間のように感じられるものだったのだろう。

この街で出会った友達と共に過ごした日々は、恵海にとってかけがえのない大切な時間だったのである。

恵海と再会し、嬉しかった穂乃果は、気づけば1時間近くも桜の木の下で話し込んでいた。

するとさすがにずっと戻ってこない穂乃果を心配するかのように、ことりから電話がかかってくる。

「もしもし、穂乃果ちゃんどこ行っちゃったの?大丈夫…?みんなそろそろお昼ご飯にしたいって言ってるけど。特に花陽ちゃんがうるさくて…」。

スマホ越しにはお腹すいたと言う花陽の声や皆の騒々しい声が聞こえてくる。

それを横で聞いていた恵海はクスクスと笑っていた。

「ごめん、すぐに戻るから待ってて!」。

そう言って穂乃果はことりとの通話を終える。

「恵海ちゃん、部室に海未ちゃんとことりちゃんもいるんだ。だから一緒に来て!」

そう告げると、穂乃果は恵海の手をとって校舎へと向かう。

戸惑いの表情を見せる恵海。

「ねぇねぇ穂乃果ちゃん、私部外者だよ。勝手に入ったら」

「大丈夫、もし何か言われてもなんとかするから。こう見えても、私は元生徒会長だからねぇ!」

何の根拠もない自信で穂乃果は言い切る。

そのままあっという間に校舎の中へと入り、部室の前まで来た2人。

だが、穂乃果とは対照的に恵海は足を止める。

それもそうだ、いくら穂乃果の友人とは言え、恵海の言う通り部外者なのだから。

本来なら外来受付をしなければいけない。

いや、と言うよりも…

「どうしたの恵海ちゃん?入るよ」

「ちょっと待って穂乃果ちゃん、私泣いちゃうかも…」

恵海は扉の先に海未とことりがいると考えると、感情を抑える自信がなかったのだ。

穂乃果ちゃんと再会した時でさえ、感情を堪えるのに必死だったのに…海未ちゃんとことりちゃんにも会ったら、きっと私…と恵海が思ったのも束の間だった。

穂乃果は優しく微笑んで、部室の扉を開けたのであった。

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