名前に秘められた呪い

コールミー・バイ・ノーネーム


コールミー・バイ・ノーネーム

斜線堂有紀(著)

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斜線堂有紀(著)

友達になるために恋人になる。

その日世次愛(よつぎめぐみ)はゴミ捨て場に捨てられた容貌の美しい女と出会う。

愛は困っている人は放って置けない性格で、誰彼構わず助けてしまう人だった。

美しい人は愛に気づき、関西弁で声をかけてくる。

うちを見つけたなと、そして一晩泊めてくれと。

初めて会った人を拾うようにして家に止めることになった愛。

名を尋ねるとシェヘラザードと名乗り、全く理解できない人だった。

寝て、目を覚ますと、愛の上に馬乗りになり襲おうとしていた。

何を考えているのか全くわからない女、だが愛は彼女を追い出はしなかった。

翌日朝になると彼女の姿はなく、悪い夢だったのではと愛は思う。

しかしすぐに彼女と再会することになる。英知大学と言う名門校に通う愛は2日後、大学のキャンパスでそれを見つける。

ゴミ捨て場に捨てられていた女である。彼女の名は古橋琴葉(ふるはしことは)といい、愛と同じ大学に通っており、ある意味において有名人であった。

琴葉は愛に対し、自分と付き合うことを持ちかける。

同性愛…恋人になると言うこと…それに対し愛は普通に友達になりたいと言う。

琴葉は勝負をしようと言う。

2人が付き合っている間に愛が琴葉の本当の名を当てられたら友達になろうと言うのだ。

琴葉は自分の名は呪いのような宿命なのだと言う。

謎に包まれた女性との奇妙な関係がスタートした。

これは恋人から友達になるための名前当てラブストーリーである。

この作品はラブストーリーと言ったが百合作品と言う以上に力のある作品だと思う。

琴葉の秘められた壮絶な過去は言葉に余るものだし、ぎこちない関係から徐々に琴葉のことを好きになってしまう愛の思い、恋人から友達になるためなのに、一緒にいればいるほどその思いが強まっていく切なさはなんとも形容しがたいものである。

ラブストーリー+ミステリーであるが、同性愛であったり親から子への虐待であったりと、現在社会の抱える問題を提起するかのような内容を、その筆力で存分に表現しているのは見事だと思う。

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