アーサー・C・クラーク 池田真紀子訳
それは人類がこれまでたどってきた歴史に終止符が打たれた瞬間だった。
巨大な飛行物体の群れが地球に向かって降下し、世界中の大都市の上空で停まったのである。
謎の訪問者を人類はオーバーロードと名付けた。
だが彼らは声明こそ表すものの、人類の前に姿を現す事はなかった。
それから数年…オーバーロードは地球に平和と繁栄をもたらしていた。
さらに世界連邦化を目標に掲げる。
一方で自由を奪われたと主張する自由連盟と言う組織も存在し、国連事務総長は拉致されてしまう。
しかしオーバーロードの地球総督、カレランにより救出されるが、それでも姿を現す事はなかった。
彼らは人類をどのような未来へ導こうと言うのか…
徹底した秘密主義はなぜなのか…
多くの疑問が残るが、彼らは50年後に姿を明かすと言う。
時は経ち、ついにオーバーロードの姿が明らかになるが、謎はよりいっそう深まっていく。
とは言え彼らによって、地球はユートピアと化していた。
世界は統一され、争いはなくなり、全く別の世界へと変貌を遂げていた。
これは人類の黄金時代だった。
しかしそれは容赦ない速度で終焉に向かっている事を知るのは、カレランのみだった。
そんな中で、あることに気づいた青年、ジャン。
彼は壮大な計画を実行するために動き出す…
発表から70年がたっても色褪せることのない名作。
自分が読んだのは36年後に第1章を書き直されたもので、オリジナルとは多少の差異があるかもしれないが、それでも傑作であることに違いない。
長い間、異星生命体により監視されていた人類は、その理由を知らない。
超進化の可能性がある人類と、既に完成された生命体。
人類の向かう先はどこか、人類が宇宙を制する日は来ない、そんな人類を見守ることしかできない滅びゆく者たち…
この作品は哲学的であり、黙示録的でもあり、そして美しさもある。
この先もずっと読み継がれていく作品であろう。