主人公が知ったボーダーの向こう側の世界

ボーダー二つの世界


ボーダー二つの世界

ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト (著), 山田文 (翻訳)

image
ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト (著)

 山田文 (翻訳)

スウェーデンの税関で働くティーナ。

彼女には不審なものを見抜く特殊能力があった。

その男が現れた瞬間、ティーナには何かを隠していることが分かった。

だが男の荷物には虫を育てるための箱以外に不審なものはない。

ティーナは箱を怪しむが、何か問題があるわけでもなく、他には何も出てこない。この男を監視したいが、ティーナにそこまでの権限はなく男を解放する。

しかし男は別れ際にまた会うだろうと告げ、ティーナにキスをして去っていったのだった。

ティーナは子供の時に事故に遭い、顔にはやけど傷や傷を負っていた。

形成手術もしたがうまくいかず、ティーナは自分の運命を受け入れる。

そんな彼女のやすらぎは、森にある木と話をすること。

子供の時から数え切れないほど木と話をしていた。

そして再びティーナの前にあの男が現れる。

何かを隠しているという感覚は、前以上に強かった。

男はヴォーレと名乗る。

だが実は男でなく女であった。

外見は完全に男だが、彼は女だった。

その出会いがティーナを変えて行く。

次第にティーナはヴォーレに親しみを感じ、やがて自分の過去と真実を知っていくのであった。

表題作「ボーダー二つの世界」をはじめ集合住宅のアパートに忍び寄る恐怖を描く「坂の上のアパートメント」不法侵入した家で死体を発見ししたいとの関わりを描いた「Equinox」。

プールで有名人をパパラッチする男を描く「見えない!存在しない!」

海での事故で死にかけた男の恐怖を描く「エターナル/ラブ」

万引きを繰り返す高齢女性の犯罪譚「マエケン」等、11作品を集めた短編集である。同名映画の原作である「ボーダー二つの世界」現実と異界の境界を描いた作品を集めている。

忍び寄る恐怖、人間ではない存在、死者や再生者といった存在がじわじわと作品に恐怖をもたらしている。

特に水に関しては「死」そのものを直接的にイメージさせる。

一方で守りについては対照的に穏やかに書かれている。

スウェーデンのスティーブンキングと呼ばれる作者の作品。一読の価値はあるだろう。