フィリップ・K・ディック (著), 土井宏明 (イラスト), 浅倉久志 (翻訳)
世界最終対戦後の地球は、放射性降下物の影響で様々な生物が絶滅し、生きている生物は高値で取引されていた。
生きている生物を所有するのは、成功者の特権であり、持てない者は代替え品の電気動物しか持てないのである。
多くの人が、地球から火星へ移住する中で、地球に残った者にとって、生きている生物を所有することが地位の象徴だった。
警察官として BOUNTY HUNTER(賞金稼ぎ) Android 狩りを生業としているリック・デッガードは、以前は本物の羊を所有していたが、今は電気羊しか所有していなかった。
生きた動物が欲しいと思っていたリック。
そんな彼のもとへ、吉報が届く火星から8人の新型Android (アンドロイド)が逃亡し、リックに Android を刈る指令が下された。
一体につき莫大な懸賞金がかけられており、リックは生きた動物を手に入れるため、Android 狩りを始める。
しかし次第にリックはAndroid や他のバウンティハンターと関わっていく中で、何かがおかしくなっていく。
果たして、自分が人間なのかどうかさえ確信が持てなくなり、人間とAndroid を区別するための感情移入度テストを、自分自身に試してみたりと、リックは迷いだす。
そんなリックはやがて一つの答えとたどり着くのだった。
この作品は読むたびに新しい何かを感じることができるのではないだろうか。
最初に読んだ時2回目に読んだ時と読後に感じることは、違う作品を読んだかの気分であった。人間とは何かという深いテーマが垣間見える作品であろう。
人間と Android の境界線は何なのか。
そもそもが何が人間で、何が Android なのか。
何が本物で何が偽物なのか。その区別に意味があるのか。
それはフィリップ・K・ディックの問いかけのようにも感じる。