その後のラブライブ

続きを勝手に考えたUEP-003新しい日々、僕らのライフ⑥(22)


ラブライブの続きを勝手に考えてみるEP-003新しい日々、僕らのライフ⑥(22)

音乃木坂図書室 司書

ラブライブの続きを勝手に考えてみるEP-003新しい日々、僕らのライフ⑥(22)
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ラブライブ! 2nd Season

ラブライブ! 2nd Season Blu-Rayより

そうこうしている間に、 2人は行きつけのカフェへと到着していた。

店頭には看板に手書きで The Forth Avenue Cafe と書かれている。

外観同様、おしゃれな店名でニューヨークの一角にありそうなカフェである。

お店の扉を開けると"カラン、コロン"という、どこか古めかしく懐かしい音が響き、店のマスターと思われる男性が渋い声で”いらっしゃいませ”と二人を出迎える。

店内はクラシックなテーブルやイスが並んでおり、落ち着いた雰囲気を醸し出しているが、流れている音楽はヒップホップであった。

店の雰囲気からすると普通はジャズが流れるであろう。

だがこの店のマスターは音楽フリークである。

その日、その時の気分によって流れる音楽が変わるのだ。

国内外、ジャンルも問わず、ロック、ヒップホップからジャズ、クラシックさらにはアニソンやアイドルの曲が流れることもある、少々変わった店であった。

希はマスターと親しげに話をしている。

「マスター、今日はヒップホップなんやね。選曲最高やんか、 うちもこの曲めっちゃ好きやし、さすがマスターやね」

実は希もまた、かなりの音楽好きであり、特に洋楽には目がないのである。

幼少の頃に洋楽が好きになり、歌詞の意味を理解するために、英語を勉強していたら、いつのまにか英語がペラペラになっていた希である。

ちなみにフランス語については、フランスが好きで興味を持ったから独学で勉強していたら、日常会話には困ることがないぐらいに上達していたのだ。

つまり単純に希は頭が良いのである。

それはさて置き、このお店には絵里とともに高校1年生の頃から通っていて、マスターとも常連客として顔なじみで仲が良いのだった。

「さすが希よね、よく聴いただけで何の曲かすぐわかるわよね。

私は二人が何を話しているのか全く分からないよ」

「最近のおすすめを教えてもらったんよ。あ、マスター 、いつものやつでお願いします」

席についてしばらくするとマスターがお待たせと言ってパフェを持ってくる。

だがそれはメニューにない特別メニューであった。

多いときには週に2回も来ていた二人。

何かあると(別に何もなくても)二人で来るときはいつもこの店だった。

ここのカフェであれば、学校から近いとはいえ、十代の若者がくるような雰囲気ではないので、音乃木坂の生徒が来ることなどまずない。

周囲を気にせず二人だけの時間を育むことができたこの店は、2人にとって大切な場所なのである。

それがこの The Forth Avenue Cafe であった。

そして常連となり通い続けた結果、いつの日からか裏メニューとしてチョコパフェと希フルーツパフェたるものが誕生したのだ。

具材の多さとその量は通常メニューのものより3倍はあろうかというほど豪華なパフェであった。

「二人とも今日は入学式?着物似合ってるね。最近来てくれなかったから寂しかったよ。

でもそのぶんμ'sの活躍はすごいね。応援している僕も嬉しいよ」

マスターは親しげに2人に話しかける。 応援しているという言葉は2人にとってすごく嬉しいものだった。

しかし同時に申し訳ない気持ちになってしまう。 だってもうμ'sは終わったのだから…そう思いつつも二人はパフェを頬張り笑顔を見せる。

慣れ親しんだ味を口にすると人は安心するものである。

二人は久しぶりのパフェにご満悦であった。

そして食べ終えた頃に店内のBGM が変わった。

ヒップホップからアイドルの曲へとだ。

店の雰囲気には適わないが店内にはA-RISEの曲が流れる。

その曲はA-RISEのスクールアイドル時代の大人気曲で誰もが知っている曲であった。

そしてA-RISEの次に流れた曲、それは自分たちμ'sの曲、ユメノドビラであった。

この局はラブライブ東京予選の、最終予選へと勝ち進んだ曲で、2人にとっても想い出の多い曲である。

あの頃の事が2人の脳裏を過ぎる。

イントロが流れ、絵里と希は互いに顔を見つめ合っていた。

「あのなあえりち、うちなぁ、今日ツバサに再会して思ったことがあるんやけど聞いてくれる…?」

「何?希の話はいつでも聞くに決まってるでしょ」

少し間を置き、やや神妙な面持ちで希は喋り出す。

「ニューヨーク行った時、あの時点でμ'sはもう終わりって決めてたやんか。

でもな、たまたま真姫ちゃんが持っていたMusicBook見ちゃって...そこには、μ'sの新曲が作ってあったんだよね。

真姫ちゃんに訊いたら、自分の中での一つのケジメだからって言ってたんやけど、その後のスクールアイドルでライブした時も、その曲はμ'sだけの曲にしたいからって、サニソンを作ったんよね。

それでその後、真姫ちゃんはあの曲をどうするのかなと思って…」

真姫の作った曲が気になるのはもちろんの事、それは希のμ'sに対する想いだった。

皆で終わると決めた、でも希の中では今でもあの楽しかった日々、皆で共にした毎日が昨日のことのように鮮明でμ'sが終わったという現実が受け入れがたいのだった。

頭で理解しているけれど、心の奥底で終わりたくないと否定する自分がいるのだ。

それほど今でもμ'sのことを想っていて、ツバサに再会したことがきっかけで、その思いはより強くなったのである。

その思いは絵里も同様であった。

「私もね、実は同じような事を考えていたんだ…

ツバサにμ'sの事を色々と聞かれたり、大学に通いながらプロのアイドルとして活動するって聞いて、凄いなって思うのと同時に羨ましくも思ってしまった…

μ'sは終わりって決めたはずなのに…

今日ずっと、μ'sのことで頭がいっぱいだったの…」

μ'sの活動が終わってから、実際にはまだ数日しか経っていない。

たったの数日である。

だが、多くの人がμ'sが終わってしまったことを悲しく思い、復活を希む人が多くいる。

そして当の本人達もまた、その想いは強かった。

「絵里ち、うちなー…μ'sがやりたい…

もう一度あの9人で…まだ終わりにしたくないよ…」

希の思いに応えるように絵里も言う。

「うん、私もだよ…μ'sがやりたい、みんなでもう一度…」

絵里と希のμ'sに対する思いは変わらなかった。

はっきりと口に出してμ'sがやりたいと言った二人であった。

もう一度あの場所へあの場所に立ちたい…そう思う絵里と希であった。

こうして様々な思いが巡った大学の入学式も終えて、二人の新しい日々はスタートした。

 

9人全員で話し合い、全員が納得した上で、μ'sは終わりと決めた。

もうμ'sとしては活動しないって決めた。

9人で何回も泣いて、笑って、また泣いて…そしてようやく決めたこと。

でも…もうμ'sは終わりって決めたはずなのに… アニソンライブで皆の前で宣言もしたのに… 今日ツバサに再会したことにより、絵里と希の気持ちは大きく揺れ動いたのであった。

そして…このツバサとの再会がこの先を大きく変えることになるとは、絵里と希には知る由もなかった。

続く

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