音乃木坂図書室 司書
その後も抽選会はまだまだ続いていたが、部室で見ている6人は今日突然抽選会に参加していたOG 3人の話題で盛り上がっていた。
みんなが一斉に3人に対しメールを送る。だが抽選会に参加中のため、もちろん誰からも返信は無い。
そんな中で花陽は1人、ずっとぶつぶつとつぶやいていた。
「ずるい…ずるいずるい…なんでえりちゃん達だけ参加してるの…?
私も参加したかったのになんで呼んでくれないの…?私もA– RISEと一緒に出たかったのに…
ずるい…なんでなの…意味わかんない…どうして…ねぇなんでなの真姫ちゃん!」
ぶつぶつと文句を垂れる花陽にいきなり振られていらっとする真姫。
「そんなこと知らないわよ!私に言わないでくれる!?」
すると、凛がフォローするように言った。
「しょうがないよ、かよちん。私たちはまだ高校生だし、学校もあったから」
「でも…学校はもう午前中で終わりだし、急げば私たちだって間に合ったと思うのに… 3人とも一言位声かけてくれてもいいじゃん…」
「あー、もういつまでもうるさいわね、花陽!今更どうしようもないでしょう!」
真姫に一喝されてしょんぼりする花陽であった。
それだけ参加したかったのであろう。
その光景を見ていた穂乃果は、まるでいつも自分が海未に怒られている姿と重ねあわせていた。
周囲から見るといつもこんな感じなんだなぁと思いつつ穂乃果が言う。
「ドンマイ花陽ちゃん。大学生はいいよね。授業ない日もあるらしいし。私たちも一緒に参加したかったけど、こればっかりは仕方ないよ」
珍しく先輩ぽいことを言う穂乃果にことりも続く。
「うん、それはしょうがないよね。高校と大学や短大じゃ授業の時間やカリキュラムも全然違うからね」
「そういうことよ花陽、わかった?」 諭すかのように真姫が言った。
しぶしぶ花陽はうなずく通常の花陽なら何の問題もないが、アイドルモードになった時の花陽は面倒くさいと思う真姫だった。
さらに言えば白米モードに入ってうんちくを語り出した時は、面倒くさいを通り越してうざいと感じる位であるが…
しかし真姫はそんな花陽のことが大好きなのだ。
2人は同学年だが真姫は4月生まれ花陽は1月の早生まれなので、1つ年下のようなかわいい花陽が妹みたいで大好きなのである。
それはさておき、そんな話題で盛り上がっていると、海未は荷物をまとめてみんなに言った。
「それでは皆さん、今日はこの辺で私は失礼させていただきます。弓道部の方へ行かないといけませんので」
海未はそう皆に告げると足早にスクールアイドル部の部室を後にした。
海未は音乃木坂に入学し、もともとは弓道部に所属して活動していたのだ。
そして2年生になった時、穂乃果の半ば強引な誘いにより弓道部との賭け持ちと言う形でスクールアイドル部にてμ‘sのメンバーとして活動していたのである。
ちなみに海未は弓道部の部長も務めており、その実力は都内でも屈指であった。
海未は週末に弓道の都大会が控えていたのだ。
そんな海未の背中をみんなで見送り、真姫が言う。
「海未も忙しくて大変そうね。昨年からずっとμ‘sをやりながら弓道部も部長として引っ張ってきたんだもんね。
おまけに生徒会ではずっと穂乃果に足を引っ張られてきて…それでも文句1つ言わずにずっとやってきたんだもんね。たいしたものだよね」
「ねー真姫ちゃん…ちょっと気になったんだけど、私が足引っ張ってるってどういう意味かな??」
「そのままの意味じゃないの、穂乃果はいつも海未に怒られてたじゃないのよ。
海未も大変だよね。私、どうして穂乃果が生徒会長をやっていたのか、今でも謎なんだけど」
「えっと、それは…絵里ちゃんが私に生徒会長をやりなさいって言ってきて…希ちゃんも私でええんちゃう?みたいな軽い感じでそれで…それで私もなんとなくノリでオッケーしたっていうか…」
後輩に痛いところをつかれて一気にテンションが下がる穂乃果。
すかさず真姫自身がフォローする。
「冗談よ、冗談。穂乃果が生徒会長でよかったよ。音乃木坂の皆を穂乃果が中心となって引っ張ってくれたじゃない。元生徒会長として感謝してるわよ」
相変わらずの毒舌であるが、決して先輩をリスペクトしていないわけではない。
ただにこがいなくなった今現在、真姫のいじりのターゲットが穂乃果に移っただけである。
「ねぇ、ところでさ、海未は今週末が最後の都大会って言っていたわよね?」
真姫がみんなに尋ねるように言った。
穂乃果がそれに答える。
「うんそうだよ。でももし都大会で海未ちゃんが優勝したら、8月の全国大会に出場だよ」
「全国大会って言うけど、まずは週末の都大会でしょ。ていうかさぁ、海未はどれくらい強いの?」
それに答えたのはことりであった。
「海ちゃんは優勝候補の1人だよ。昨年の大会では2年生ながら準優勝だったし、今年は優勝できるといいよね」
ことりの言葉に真姫を始め、凛と花陽も驚いていた。
海未の弓道の実力を2年生の3人は知らなかったのである。
確かに今まで話題にならなかったのも不思議ではあるが、特にスクールアイドルとは全くと言っていいほど無関係であるため海未も話をする事はなかったのであった。
ただし当然ながら、同学年で幼なじみのことりと穂乃果は知っていた。
穂乃果が言う。
「そういえばみんな知らないんだっけ。海未ちゃんの家って1回も行ったことなかったもんね。
私の家から近いんだけど、海未ちゃんの家は日舞・園田流の家元だよ。家には武道場もあって、海未ちゃんは小さい頃から弓道と剣道をやってるんだよ。
その実力は両方とも相当なものだよ。中学生の時もすごかったし」
「そうそう、中学の時は全国大会に出てるもんね」
ことりが補足するように言った。
「そうなんだ、すごいわね海未…全然知らなかったよ。でもどうりで海未はあの喋り方ってわけね。なんとなく納得って感じかな」真姫が言った。
さらにことりが続ける。
「うん。海未ちゃんといつも一緒に練習してて、運動神経の良さや踊りのうまさはも、ずいぶん前に気づいていたでしょう。子供の頃から海未ちゃんは踊りや武道をやっていたからなんだよね」
その言葉に2年生の3人はうなずいていた。
「それともう一つ。穂乃果の口から家元とか難しい単語が出てきてびっくりしたんだけど」
「ねぇ、真姫ちゃん、私のこと馬鹿にしすぎでしょう…それぐらい知ってるよ。海未ちゃんとは小さい頃からの付き合いなんだからね!」
「冗談だって。すぐ怒らないでよ。穂乃果ったらもうかわいいわね」
真姫はそう言って穂乃果の顔を撫で回していた。
本当にどっちが先輩だか分かったものではない。
そんな2人をよそに花陽がつぶやいた。
「すごい海未ちゃん…大会は土曜日か。応援行こうかなぁ…」
そのつぶやきに穂乃果がすぐさま反応した。
「花陽ちゃんそれ!ナイスだよ。みんなで応援行こうよ!絵里ちゃんたちもみんな誘ってさ。真姫ちゃん、土曜日はBiBiの予定何か入っていたりする?」
「今週は何もないわよ。だから絵里もにこちゃんも何もなければ予定は大丈夫だと思うけど」
「そっか、じゃあ真姫ちゃんは、2人に連絡よろしく。希ちゃんには私が連絡しておくね。よしじゃあ今週の土曜日はみんなで海未ちゃんの応援だね!」
と言うことで週末の土曜日、急遽海未の弓道部最後の大会をみんなで応援しに行くことになったのであった。
続く