音乃木坂図書室 司書
東京駿河台女子大学。
通称駿女のキャンパス、噴水前広場に設置された、特設ステージの客席には、多くの観衆がライブ開始を待ちわびていた。
またテレビを始め、アイドル業界の人も多く駆けつけており、それだけこの日のライブは注目されている証拠である。
A– RISEにμ‘s、BiBi…他にも多くのアイドルが出演する。
まるでフェスのようなライブなのだ。
午後になり初夏の日差しがより眩しくなり、会場の熱気とともにライブがスタートした。
13時、トップバッターのBiBiがステージに現れる。
それと同時に大歓声が沸き上がる。
A– RISEのライブに出演してから以降は、精力的に活動を行い、様々なイベントやライブに引っ張りだこのBiBi。
プロではないが今ではかなりの人気と知名度であり、世間ではBiBiがいつプロデビューするのかと話題になる位である。
ステージに3人が現れるとすぐにBiBiのライブの定番となったオープニング曲、CutiePantherで幕を開けた会場は、大熱狂である。
そして誰もがその奇抜な衣装に目を奪われていた。
今回の衣装、光る以外にも見た目からしてすでに凄かった。
シースルーなのだ。
つまり透けているのである。
どうしたらこんな衣装が作れるのかと言うほど、その発想は飛び抜けており、柚梨愛ならではだろう。
もともと、レイヤーとして自身が活動しているからだろうか、見せると言うことに対して抵抗がないのだろう。
ただし透けた衣装の下が下着と言うわけにはいかないため、柚梨愛の用意したものを着ているのだが、露出の多いものであり海未であったら断固として着るのを拒否するようなものだった。
そんな派手で大胆な衣装を見に纏った、BiBiの3人のクオリティーの高いパフォーマンスにより最高のスタートを切ったライブ。
オープニングのCutiePantherを終えて3人はMCに入る。
「こんにちは、BiBiです!」
3人は声を揃えて、それぞれ3人が違うポーズをして静止する。
そしてそのままのポーズで5秒…絵里と真姫が口を開く。
「ねーにこ、このポーズは一体何なのかしら…」
「激しくダサイんですけど...」
「何言ってんのよあんたたちは。これがBiBiポーズじゃないのよ!」
そう言ってポーズを止める3人。
ここからにこ真姫劇場のスタートである。
「そんなポーズ知らないし、イミワカンナイ!」
「ちょっとあんたね、お客さんの前で何言ってんのよ!打ち合わせ通りやりなさいよ!」
「いや、こんなの打ち合わせしてないし」
「だとしても、こういうのは黙ってそういうことにしておけばいいのよ!」
「いやそれって詐欺じゃん。まるでにこちゃんみたいに」
「なんで私が詐欺なのよ!」
「身長詐欺に、キャラ詐欺に…」
「あんたってばねー…」
「それに…それ何入れてるのよ」
「それって何を!」
「言っていいの?」
そう言って真姫はにこの胸元をチラッと見える。
それを受けて慌ててにこは真姫を制止する。
「だめだめだめ!だめに決まってるじゃないのよ!」
「それ完全に詐欺だよね」
「うるさいわね、ほっときなさいよ!」
いつも完全にアドリブで繰り広げられる、にこ真姫劇場に、会場は歓声と笑い声に包まれていた。
2人のMCでの掛け合い(と言うより言い争い)は、その後もうしばらく続き、絵里はその間、マイク片手にその光景を眺めている。
2人の時間が続く間、いつも絵里は特にすることもなく、苦笑いしているだけであった。
「結局にこちゃんはこの前も同じようなこと言ってたじゃないの。錯覚かしら?」
その瞬間だった。 待ってましたと言わんばかりに絵里が割って入る。
「真姫、今なんて言った?錯覚?」
「えっ…錯覚…?」
にこが復唱するように続いた。
そして真姫も言う。「錯覚…?」
それと同時に曲が流れ出すと会場は再び湧く。
そして絵里が言う。
「それでは聴いてください。錯覚Cross Road」
錯覚Cross Road
BiBiのMCや曲への入り方は、本当に秀逸であった。 にこによるアドリブのMCも多数ある一方で、とてもよく考えられてもあり、お客さんにライブを楽しんでもらおうと言う気持ちがよく伝わってくる。
アドリブで行われていたにこ真姫劇場も次の曲への伏線だったのだ。
2曲目とは全く異なる曲調の錯覚Cross Roadとコミカルな曲調で人気のあるラブノベルスを2曲立て続けに披露し、再び3人はMC入る。
「みんな楽しんでますか?」
会場を煽る真姫に大きな声が返ってくる。
そして隣にいる絵里がハイテンションで答える。
「めっちゃ楽しい、超最高!」
そんな絵里ににこがツッコミを入れる。
「なんであんたが答えてんのよー!」
だが絵里はにこをスルーし、真姫に言う。
「それにしても今日は暑いわね」
「そうね、今日のライブと同じ位激アツだよね」
再びにこが割って入る。
「それは私が入るから当然でしょう」
絵里と真姫はにこをスルーして2人で話を続ける。
これもBiBiのライブですっかりおなじみになっているにこ無視タイムである。
日ごろのμ‘sやBiBiの会話の中でも、ネタでスルーされることがあるにこ。
それをそのままライブMCでも取り入れたものであった。
絵里と真姫にスルーされるたびに会場で笑いが起こる。
BiBiのライブではこうした笑いが多いのも、大きな特徴であろう。
ライブでの曲、踊りといったパフォーマンスのクオリティーが高いのはもちろんのこと、こうしたMCも含めて全てが楽しくなるように考えられていた。
だからBiBiの人気が高いのも十分にうなずけると言うものだ。
「キィィィー、あんたたちはいつも私を無視して何なのよ!もういい。次の曲行くわよ!それでは次の曲聴いてください」
絶好調のBiBiのライブはまだまだ続く。
続く