音乃木坂図書室 司書
ーー4月某日、西木野邸にてーー
5月上旬にライブが決まったBiBiの3人は真姫の家にいた。
学校の後に3人で練習する場所が必要であり、当然のように真姫の家が練習場所となったのである。
真姫の家は西木野総合病院を経営しており、真姫はお嬢様なのだ。
当然、家も 大きく、とても広い。
地下には広いシアタールームがあったりと、3人で練習するスペースぐらいなら、いくらでもあるのである。
真姫は音乃木坂での練習もあるため、BiBiとして3人で練習できる時間は限られてしまうが、それでも平日は2時間程度、真姫の家で練習を行い、初ライブに向けてなんとかなりそうであった。
そしてこの日の練習の後...
「あー疲れた。でもこれなら何とかなりそうね」真姫が言った。
「そうね。でも真姫、音乃木坂で練習して、BiBiの練習もして、体力は大丈夫?」
少し心配そうに絵里は真姫に問う。
「全然大丈夫よ。それより衣装どうしようか...」
この3人にとって1番の問題は衣装であった。
作曲は真姫が、作詞と振り付けは、絵里とにこが協力して担当しているので問題ない。
しかし衣装をデザインして作れる人がいない。
にこはアイドルが好きだからかわいい衣装を考えることはできるが、実際にそれをデザインして製作するまでには至らない。
それぞれがμ'sの時に衣装づくりを手伝っていたが、すべては衣装づくりを担当していたことりの指示の下であった。
「どうする?ことりに頼んでみる...?」
真姫の言葉ににこがすぐに言う。
「それはダメよ。これはμ'sじゃなくてBiBiなんだから。ねぇ絵里、加藤優梨愛ってわかる?」
「ん...加藤優梨愛...?えーっと...」
「あっ、そっか。絵里は同じクラスになった事ないんだっけ。音乃木坂の私のクラスメイトで、短大も一緒なんだけど、優梨愛はコスプレ大好きでレイヤーやってるくらいだから衣装づくりは得意なはず。だから相談してみようと思うの。」
「あっ、わかった!C組でよくにこと一緒にいためっちゃスタイルの良い子だ。あの子可愛いよね。 じゃあにこにまかせちゃおっか」
「オッケー、多分これで衣装も何とかなると思う。」
そこへ真姫がつぶやくように言う。
「にこちゃんと絵里はクラス替えあったんだよね。私たちは1クラスしかないから...少しうらやましいかな...」
音乃木坂は年々生徒数が減り、絵里たちの時は3クラス、穂乃果たちの代で2クラスになり、廃校の危機になり、いよいよ真姫の代で1クラスになり、廃校寸前だったのである。
「そっか、真姫はクラス替えないんだよね。でもそれは逆にみんなとなかひょくなれていいんじゃない?」
にこの言葉にうんとうなずく真姫。
「音乃木坂が無くならなくて本当によかった...」
少し物思いに耽る真姫であった。
そこへ絵里が問う。
「ところで真姫、BiBiとの掛け持ちで新しいユニットの方は大丈夫なの?」
「ええ、もちろんよ。曲も何曲か作って練習してるよ。ユニット名は未だに決まってないけどね」
「なら良かった。でも両立はたいへんでしょ?特に真姫は曲作りっていう重要な役割を担当してるんだし」
「平気よ。私を誰だとおもってるのよ。両方とも本気でやりたいからやってるんだもん」
そう言い切った真姫の言葉に、にこは笑顔を浮かべていた。
にこの頭にはあの日真姫が自分に言った言葉過っていた。
「BiBiも団子シスターズも頑張るわよ真姫!」
「にこちゃん、だんごはやめてよ!」
3人は何日か前のことを思い出して笑いあっていた。
「ねぇ、話変わるんだけど、6月の学園祭でライブやるから2人共見に来てね。新しい6人でのユニットに1年生も出るから」
「もちろん行くわよ。楽しみにしているね」 絵里は言った。
「何ならBiBiもでちゃう?」
軽い気持ちで真姫は言ったのだが、これに対してにこが思い切り食いついた。
「えっ、いいの?出る出る出るー、もちろん出るわよ!音乃木坂でもBiBiをアプールしちゃう作戦ってわけね。やるじゃないの真姫。じゃあよろしくね!」
「う、うん...わかった」 軽はずみな発言は禁物だなと思う真姫であった。
どうやらBiBiは音乃木坂の学園祭ライブに出演することになりそうである。
そこの絵里が話題を変えて言う。
「ねぇ、A-RISEのHP見た?」
「見た見た見たわよ!めちゃくちゃかっこいいよね!」
にこのテンションが一気に上がる。
「えっ、何?私見てないんだけど...」
そういうと真姫はノートPCを持ってきて、A-RISEのHPへとアクセスする。
HPのトップにはライブツアー決定と大きく表示されていた。
それと共に日程も記載されている。
・5月〇日東京新木場スタジオ 17時会場 18時半スタート
・5月X日横浜フリッツ 16時半開場 18時スタート...
etc… それはまさにプロのアイドルのHPと言ったものだった。
そして初日スペシャルゲスト参加と掛かれており、BiBi3人のシルエットのみの写真が掲載されていた。
それを見た3人は思わず感嘆の声を上げていた。
HPに掲載するからと言われてツバサにBiBi3人でポーズした写真を送っていた絵里もかっこよく加工されて、誰だかわからないようにうまく施されたつくりにさすがプロだなと思っていた。
「すごっ...かっこいい...っていうか、初日って、会場新木場スタジオってやばいね。結構大きなハコじゃないの...」
改めて真姫は自分たちが参加させてもらうライブの規模と、A-RISEの凄さを実感していた。
μ'sとしてかなり大勢の観客の前でのライブ経験もある。
だかあくまでそれはラブライブの部隊である。
一流アーティストが使用するライブ会場、それはいやも応もなく、本物のステージである。
真姫の隣では喜びの余り、にこが涙を流している。
絵里も同様にうれしそうだ。
「さすがプロのアイドル...凄いわね。HPとかの作りもすごいかっこいいし、私がツバサに送った写真もこんなにかっこよく加工されていて...見てて鳥肌が立ちそうなくらいね...」
絵里が呟くように言うと、にこがそれに反応する。
「あっ、だったら私たちもHP作っちゃう?私たちはプロのアイドルじゃないけどつくっちゃおっか。私作れるわよ」
「えっ、にこちゃん本当?すごいじゃないの」
「まぁね、私を誰だと思ってるのよ、真姫」
「えっと...小さい人...?」
「何よそれ!失礼ね...まぁいいわ、小さくても中身は大きいってのを見せてあげるわ!」
にこの意外な才能を発見した瞬間であった。
それにしてもだ、知ってはいたが、改めてA-RISEの凄さを再認識した3人であった。
同じSIとして同じ舞台を目指して競っていたライバルが、今はプロのアイドルとして活躍している。
嬉しさとともに湧き上がってくる不思議な感情... だがこの3人もプロではないが、決して劣ることはない。
BiBiとしてはまったくの無名であるが、μ'sとして培ってきたものがある。
不安はあるであろう。しかしやるだけのことをやるだけである。
それを3人も十分に分かっている。ライブが待ち遠しい3人であった。
「いい2人共!A-RISEに負けないぐらい私たちのライブ、絶対に成功させるわよ!」
にこの声に絵里と真姫はうんとうなづく。
3人は最高の笑顔であった。
形あるものはいつか終わりを迎える。
それはアイドルであれば、顕著であろう。
古いものは次々と廃れていく。
そして入れ替わるように新しいものが次々と生まれていく。
だがよいものは必ず淘汰され後世へと語り継がれていくものだ。
それはμ'sしかりA-RISEしかりである。
そしてまた新しくBiBiというユニットが誕生した。
彼女たちもまた今後美しく輝くであろう。
BiBi初ライブに向けて、視界に一片の曇りもない。
続く