著 訳
第1次世界大戦後の1910年代末。この時代、差別が激しく、黒人に人権と言うものは存在していなかった。
物語は、アメリカ大リーグのスター、ベーブ・ルースが野原で黒人と野球の試合をするところから始まる。
この時代、アメリカではインフルエンザが蔓延し多数の死者が出ていた。
ボストン市警に勤めるダニー巡査は、父が刑部で将来の昇進が期待される若手だった。
彼は急進グループであるボストンソーシャルクラブへと潜入捜査を命じられていたが、次第に仲間の考えに同調するようになっていく。
物価は上昇し続けるのに、賃金は最低であまりにひどい待遇に、ボストン市警は不満を募らせていく。
そんなダニーの家族、コグリン家に1人の黒人が使用人としてやってくる。
ルーサーという使用人はオクラホマで働いていた。
恋人もおり、幸せであった。
しかし同僚がギャングの金をくすねていたことが発覚し、追われる身となってしまう。
それにはギャングのボスを殺してしまい、恋人を残して逃亡してきたのであった。
そして出会ったダニーとルーサー。
それは運命の出会いだった。
2人は白人と黒人と言う立場ながらに、友情に近いものを育んでいく。
しかし彼らを待つのは困難であった。
禁断の恋を実行し、家族から縁を切られるダニー。
ルーサーは悪徳警官に脅されてしまう。
そしてついにボストン市警はストライキを行い、街は暴動で支配されていく…
この作品は激動の1910年代末期を描いた歴史小説である。
当時実際にあったボストン市警のストライキと大暴動をテーマとしている。
そこに至るまでの物語の構成や人物模写の巧みさはルへインならではであろう。
差別、貧困といった問題から、急進派、共産主義者やボルシェビキ、アナーキストやガレアーニストが活動し、テロやインフルエンザで多数の死者が出ていた時代。
物語は主にダニーとルーサーの視点で進んでいくが、物語の至るところでベーブ・ルースを登場させて話を進行させるのはさすがである。
またこの作品は「夜に生きる」の主人公ジョーの家族を描いており、両作品を共に読むのがオススメである。