地球は雪玉と化し夏空に雪が降る

雪降る夏空にきみと眠る


雪降る夏空にきみと眠る

ジャスパー・フォード (著), 桐谷 知未 (翻訳)

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ジャスパー・フォード (著)

地球は雪玉と化し、冬季になると雪と氷に閉ざされる極寒の世界。

冬季になると人口の99.9%が睡眠塔において冬眠をする。

冬眠をするには前もって太っておく必要がある。

他にもいくつかルールが存在する。

そんな世界で目を覚ましているのは、冬眠者を守る冬季取締館や冬季遊牧民、盗賊や冬の魔物であった。

そして、ナイトウォーカーもだ。

ナイトウォーカーとは冬眠時のエネルギー抑制効果のあるモルフェノックスと言う薬を飲んだ人に、ごくまれに起きてしまう症状であり、脳死状態となり、空腹になると人を襲って食べてしまうのである。

生まれ育った養育院を抜け出すために冬季取締館に志願したチャーリーは、見習いとして女性のナイトウォーカーを〈セクター12〉にあるハイバーテック本社に届ける任務に就いていた。

チャーリーは並外れた記憶力の持ち主で、その才を買われて、上司であるローガンに採用されたのであった。

〈セクター12〉取締局長のトッカータにはいろいろな噂があり、その一つにナイトウォーカーを食べると言うものがあった。

ローガンはトッカータの恋人である。

チャーリーは任務の途中でナイトウォーカーを奪われてしまう。

犯人を追うチャーリーだったが、思わぬ事件が起こり、ローガンは死んでしまうのだった。

何とか〈セクター12〉まで、チャーリーはたどり着くが、そこにいるのは変人ばかりだった。

雪降る夏空にきみと眠る

そんなチャーリーは夢を見る。

夢の中の楽園で美しい女性と出会う。

しかしその夢はやがて現実を侵食していく。

そして大きな秘密へと近づいていくのであった。

この作品は過酷な冬、魔物に盗賊、ゾンビみたいなナイトウォーカーと、ファンタジー色の強い作品かと思ったが、全然違った。

冬の物語と言うこともあってか、ストーリーも割と静かに展開していく。

物語の設定がとにかく奇抜だと感じた。

地球は現実とは逆に温暖化ではなく、雪玉がしていたり、二酸化炭素は大歓迎、ジャンクフードでどんどん肥満化を推奨と言う具合にだ。

キャラクターもオーロラ/トッカータのように個性的であり、非常に面白い。

冬の寒い夜長に、じっくりと読みたい作品である。