著者:安里 アサト, イラスト:しらび
聖教国への派遣を終えた第1機甲グループは休暇となるはずだった。
来たる〈レギオン〉指令拠点群への反攻作戦は早くて4ヶ月、万全を期すなら半年後の予定だった。
だが、レギオン側が殲滅作戦を開始したのだ。
確認されている人類圏の戦線すべてに人工衛星を転用した弾道ミサイルにて一斉攻撃を仕掛けたのである。
結果、この2年余りで前進した人類は一気に押し戻されてしまった。
休暇予定だった。第1機甲グループは呼び戻され、出撃が命じられる。
通達された任務の内容は共和国に取り残された連邦救援派遣軍の撤退支援。
そして、もう一つ、共和国市民の連邦への避難支援だった。
つまりそれはかつて自分たちをエイティーシックスとして迫害し、死に追いやった白系種、白ブタを助けると言うことだった。
シンら、エイティーシックスの面々は、それぞれの想いを胸に、再び共和国へと赴く。
そこで目にしたのは、白系種同士で醜く言い争う者の姿だった。
それを目の当たりにしたシンは心に誓う。
二度とあいつらに生きる邪魔はさせないと。
彼らにとって共和国人に対する憎しみ、怒り、怖さは既に失われつつあり、その醜さに憐みさえ覚えていた。
その避難作戦中にレギオンの襲撃に会うが、標的は共和国人だった。
そのレギオンはかつてエイティーシックスとして迫害され、死後に脳みそを取りこまれた者達だった。
恨みと憎悪が共和国人に向けられる。
絶望的な撤退作戦はどうなるのか…。
シリーズ第11弾。
エイティーシックスの見所は緻密に描かれたレギオンとの戦闘神シーンと、もう一つは迫害したものとされた者との関係だろう。
人として生きることを許されず、待つのは死のみだったエイティーシックス。
ようやく自分たちの意思で生きる道を見つけつつある矢先に、自分たちを迫害した者の救出作戦。
そこに渦巻く少年少女の感情が、今作では大きく描かれている。
上の立場の少将も戦場で散って行き、レギオンとの戦いはどうなっていくのか。
今後も目が離せない作品だ。