音乃木坂図書室 司書
音乃木坂での宿泊会を楽しむμ‘sの9人。
食後には当然のように穂乃果と花陽が苦しいと言っている。
この2人、昼食もブッフェであれだけ食べて、夕飯もこんなに食べて、本当に衣装のサイズが心配になることになった。
そんなことを考えて、ことりはいつもこの2人の衣装は少しだけ大きめに作っているが、それでも不安になる位の2人の食欲だった。
そのことりに思いを察してかどうかは知らないが、案の定海未が2人に説教をしている。
だが何を言っても無駄なのは全員わかっている。
いつでも変わらない光景に、自然と皆が笑顔になっていた。
そして部室へと戻った9人はPC側の部屋の机で雑談をする。
机にはお菓子や炎の和菓子が並び、楽しい時間が過ぎてゆく。
その時だった。
「あっ、そういえばー」と言って立ち上がる凛。
いたずらっ子の表情を浮かべた凛は、徐に部屋の電気を消したのである。もうもろに部屋の電気を消したのである。
暗闇に包まれたのと同時に大声で叫び声が上がる。
声の主は絵里だった。
絶叫と同時に隣にいた小鳥に本気で抱きつく絵里。
「痛い…痛いよーえりちゃん…」
すごい力でことりに抱きつく絵里。
ことりは苦しそうである。
「離さないで…お願いことり…もう、早くつけてよー凛!」
話さないでと言われても、ことりは一方的に抱きつかれているので、どうしようもない。
凛は笑いながら電気をつける。
絵里は涙目である。
絵里は暗闇が苦手であり、そんな姿を見てみんなが懐かしいと言って笑っていた。
「本当に怖いんだからやめてよ、閉じる
穂乃果ないよ。
「そうだ。懐かしいついでに、またみんなで屋上行こうよー!」
穂乃果の言葉にみんながうなずく。
そして屋上へ向かう確認。
音乃木坂学院は小高い丘の上にあるため、屋上からは街の景色がよく見えるのだ。のだ。
静かな廊下と階段を抜け、屋上に出る。
そこは毎日のように練習した場所であるが、昼と夜ではまるで別の場所かのようであった。
静かな屋上、周囲からは虫の鳴き声が聞こえてくる。
都会の喧騒がまるで嘘のようである。
街は美しい光に包まれており、空を見上げれば都会とは思えない位の星空が広がっていた。
屋上の出口部分のところははしごでさらに上に登れるようになっており、そこで9人は座って、アキバの街と星空を眺めていた。
「よると屋上っていいよね。景色も綺麗だし」
ことりが誰に言うでもなく言った。
それに海未が答える。
「そうですね。アキバって不思議な街ですよね。
次々と新しいものが生まれるのに、昔からの古いものも残っていて…私はそんなこの街が大好きなんですよね」
「そうだね。それにここは私たちが毎日過ごした場所で、私と穂乃果ちゃんと海未ちゃんとでμ‘sをスタートした時からいつもここにいたもんね鍵とことりが言った。
「毎日が楽しかったです。穂乃果についていて本当によかったって思います」
海未にそう言われた穂乃果ははにかむようにうなずいた。
そんな3人に加わるように花陽が言う。
「私にとってもここは大切な場所だよ。だってここは私がμ‘sの一員になった場所だから」
「ちょっと花陽って私じゃなくて私たちでしょ。私と凛もここはμ‘sの一員になった場所。私たち3人がμ‘sに加わった場所だよ」
真姫が訂正するように言った。
皆が翌日のμ‘sラストを惜しむかのように懐かしい話をお互いに語り合う。
「そうだよかよちん。凛たちが加わってμ‘sは6人になった。それからは毎日みんなで、この場所で汗を流して練習したんや」
凛も言った。
「暑い日も寒い日も、雨の日も風の日も、いつもこの場所にはμ‘sの姿があった。みんながここにいた…ここは私たちにとってμ‘sにとって原点ともいえる場所…」
穂乃果がアキバの夜景を眺めながら行った。
μ'sをスタートさせた穂乃果。
最初は他に場所がなくて、仕方なく屋上を練習場所に選択した。しかしいつのひか、この場所が自分たちの居場所となり、気づけばなくてはならない場所となっていた。
前回大会で優勝を遂げた後、穂乃果は1人で屋上に来たことがあった。それは自分にとってμ‘sにとってそれだけここが大切な場所だったからであろう。
「まぁそんなあぁμ‘sに大きな変化があったとすれば、この私、宇宙ナンバーワンアイドルの矢沢にこがメンバーに加わったことかしらね。凡庸に過ぎなかったμ‘sが、私と言う存在に出会ったことで、一気に華やかなアイドルへと転身したもんね!」
と言うにこだが、そこはいつも通り見ながらスルーする。
もちろんにこもそれをわかっていてさらに続ける。
「ドジな眼鏡っ娘の花陽に、元気だけが取り柄の退嬰的な凛に、剣山のように尖った性格の真姫も、今じゃぁ立派なスクールアイドルになったけど、あの頃は本当にどうなることかと思ってたから。でも私と言う目標に触れたことによって、成長できたのよね。3人とも良かったわね!」
スルーされるのをいいことに言いたい放題のにこである。
だが、それらはあながち間違いではない。
にこのアイドルに対しての姿勢、好きなことや、やりたいことに全力で打ち込む姿勢と言うのは少なからずとも後輩に影響を与えていたのだ。
「まぁそういうことにしといてあげるよにこちゃん」真姫が言った。
凛と花陽もうなずく。
「その頃の私は屋上の光景を見て羨ましく思っていた。自分の気持ちに素直になれなくて…やりたいことをやっている穂乃果たちがまぶしくて…だから私はみんなに反発するような態度だった…大人気無いのはわかっていたけどね…」と言ったのは絵里である。
あの頃の思いを吐露するかのように...
するとにこが突っ込む。
「絵里はμ‘sを潰そうとしてたもんねぇ」
「そ、そんなことないわよ…やめてよにこ…」
言葉に少し詰まる絵里。
痛いところをつかれたと言う表情でにこを見つめる。それはあながち間違いではなかったのだ。
それをフォローするように希は言う。
「でも、絵里家もいつしかμ‘sのことを認めて、そしてμ‘sに加わってからは誰よりもμ‘sのために活動してきたやんか。絵里の存在がμ‘sをより大きくしたのは間違いないし。でもな、そんな絵里ちも家もそう、1人の存在にすごい惹かれたんだ。そして救われたよ」
「それって私のことかしら?困っちゃうなぁあぁ」と、にこが言うが、すぐに真姫が突っ込む。
「そんなわけないでしょうに。なんでにこちゃんなのよ!」と言う言葉に意味長を洗う。にことことりも。そう、それは1人しかいない。
Μ‘sを作った1人しか。
「うん、穂乃果に…あの日私は穂乃果に救われたの。そしてみんなにも救われた…」
絵里が言った。
そして希が続ける。
「こうしてμ‘sは9人になった。
穂乃果ちゃんのおかげで、うちらはμ‘sの9人になったんだ」
そして自然と全員が穂乃果を見つめる。
少し照れたような仕草をして穂乃果は皆に言った。
「私たちはきっとこうして巡り会う運命だったんだと思う。
私はみんなと出会えて、みんなとここまで来れて本当によかった。
私はみんなのことが大好き。本当にありがとう。
そしてこれからも…ずっとずっと… μ‘sが終わっても…ずっとずっとよろしくね」
穂乃果は改めて全員に感謝の思いを伝えた。
今一度お互いの存在の大きさを確認した9人は肩を並べあい、屋上から夜の街並みを眺めていた。
その一つ一つの明かりを、限られた中で輝こうとする自分たちスクールアイドルに重ねて…そして翌日…いよいよμ‘sファイナルライブの日がやってきた。
続く