その後のラブライブ

ラブライブの続きを勝手に考えてみるEP-003新しい日々④(20)


ラブライブの続きを勝手に考えてみるEP-003新しい日々④(20)

音乃木坂図書室 司書

ラブライブの続きを勝手に考えてみるEP-003新しい日々④(20)
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ラブライブ! 2nd Season

ラブライブ! 2nd Season Blu-Rayより

会場は、μ'sの東篠希だと皆が知っており、大きな拍手とともに大歓声がわき起こっていた。

「うー、めっちゃ緊張するやん…てゆうかこの歓声は何なん…?」

ボソッと呟く希に、茶化すかのようにツバサが声をかける。

「頑張ってね、μ'sの東篠希さん!」 緊張した面持ちで壇上へと向かう希。

大学の入学式とはとても思えない盛り上がりである。

それだけμ'sのそして希の人気があると言う証拠である。

「やっぱりμ'sの人気はすごいね。ライブ会場みたい」

「確かにそうね。でもこれがツバサだったとしたら、もっと凄いことになってるんじゃない?」

それを聞いたツバサは思案顔をしたかと思うと何かを閃いたような笑みを浮かべ、ウフフと言って絵里の手を取り席を立ち上がった。

その瞬間、絵里はツバサの考えていることを理解し、余計なことを言ってしまったと後悔するが、もう遅い。

絵里の手を引き、壇上へ向かおうとするツバサ。

ステージでは希が挨拶を始めたところであったが、絵里とツバサに気づいた新入生からはさらに大きな歓声が上がっていた。

「ちょっ…ちょっとツバサってば、何考えてんのよ!」

「いいじゃん、せっかくだし私たちも上がっちゃおうよ」

「そうね…って待ってよ。せっかくの意味がわからないって!」

もう手遅れであった。ツバサに引っ張られて、絵里は壇上へと上がっていった。

突如乱入してきた絵里とツバサに挨拶をしていた希は唖然として言葉を失っており、同じく大学関係者や来賓の面々はあっけにとられていた。

ただ1人進行役の女性は2人を見て喜びの表情だ。

会場からは大きな歓声が飛び交う。

ここで進行役の女性が突然の出来事ではあったが、機転をきかせる。

”突然ですが新入生代表挨拶をしてくれているご友人2名が来てくれました。

お一人は東篠さんと同じμ'sのとして活躍されている絢瀬絵里さんに、もう一方はなんと!あのA-RISEの綺羅ツバサさんです! 皆様大きな拍手をお願いします“

すると会場はさらに大きな歓声と拍手がわき起こる。

その歓声に応えるようにツバサは笑顔で手を振る。

「違うの…私は止めたんだけどツバサが無理矢理…」

「何言ってるのよ絵里、そんなこと言いつつも、あなたもちゃっかりステージに上がってるじゃないの」

「それはツバサ、あなたが私の手を引っ張るからじゃないのよ!」

3人のやりとりを見て会場からは笑いが起きていた。

するとツバサは希からマイクを奪い取り、会場に向けてしゃべりだした。

「みなさーん、こんにちは。A-RISEの綺羅ツバサです。あと友人の絵里と希でーす。入学おめでとうございます。

実は私たち3人も今日から駿女に入学したのでみんなよろしくね!」

ツバサの言葉に一気に会場が湧く。さすがはプロアイドルをやっているだけの事はある。

会場を盛り上げる術は一流だ。さらにツバサによる新入生代表挨拶、と言うよりはライブにおけるMCに近いマイクパフォーマンスは続く。

絵里と希は隣でちょこんと立ち尽くしている。

だがツバサの存在感はさすがだなぁと思う2人であった。

しばらく話し続けて満足したのだろうか、笑顔で“ハイ交代“と言ってツバサは絵里にマイクを渡す。

マイクを渡されたものの戸惑う絵里。

会場からは絵里の名を呼ぶ声が上がっている。

そこへツバサが催促を入れる。

「ほら絵里、あなたも早く何かしゃべりなさいよ!」

ツバサに背中を押され、一歩前に出た絵里は仕方なくしゃべりだす。

「えー…音乃木坂学院から来ました絢瀬恵理です。 正直、今この展開に多少戸惑いはありますが、この度は私も東京駿河台女子大学に入学することになりました。

そして皆様もご入学おめでとうございます。 これから始まる新しい日々につきましては…」

少し硬くはあるが滔々と語る絵里。

さすがは音乃木坂で生徒会長を務めていただけあって、とっさの判断力は大したものだ。

ツバサにより巻き起こされた予想外の展開にも冷静に対応し、そつなく挨拶をこなしていた。

そして希にマイクを戻す。

「以下同文。以上、新入生代表東篠希でした」

無理矢理挨拶を終わらせた希。

絵里と希は一礼し、ツバサは手を振りながら壇上を後にし席へと戻る。

その間、3人に対する大きな拍手が止む事はなかった

「あー、楽しかった。もっと話したいことたくさんあったんだけどな」

席に戻るや、ツバサは2人にそう言った。

途中からはほとんどツバサの独壇場だったにもかからわらず、まだ話したりなかったらしい。

「もう勘弁してよツバサってば…破天荒すぎるわよ…」

「とか言っておきながら絵里もしっかり挨拶して笑顔で手振ってたじゃない。さすがは元μ'sで音乃木坂の元生徒会長よね」

「いや…あの展開じゃぁそうせざるをえないじゃん…」

「でも楽しかったでしょ!?」

そう言ってツバサは屈託のない顔で笑う。

その顔を見て自然と絵里も笑顔になっていた。

性格は全然違うけどなんとなく穂乃果に似ているなと絵里は思っていた。

そこへ希が言う。

「もう、うちの挨拶が台無しやんか…せっかく昨日30分も考えたのに、ほとんど喋ることなくツバサに持っていかれたやん」

「え、希あの挨拶30分で考えたの?よくあんな小難しい挨拶を30分で考えたわね。希あなたってもしかして天才!?」

「いや、別にそんなことあらへんけど…」

「いや、天才よ!すごいわよ希。ねー今度A-RISEのライブのMCで良いセリフを考えてくれない?お礼にスイーツおごるから!」

気づけば希も自然と笑顔である。

これはツバサの生まれ持った才能なのだろう。

自然と人を惹きつける姿は、やはり穂乃果に似通ったところがある。

こうしてツバサによる新入生代表挨拶ジャックは終えたのだが、巻き込まれた絵里と希は別として新入生のほとんどが、このサプライズに満足していただろう。

言葉とは裏腹に絵里と希も内心ではツバサの行動に対して楽しさを感じていたのも事実であった。

「せっかくだし3人で歌って踊ちゃえばよかったかもね。そうしたらもっと盛り上がっただろうし」

ツバサの言葉に対し、さすがにそこまでは…と思う絵里と希。

でもツバサの言う通りなのかもしれない。

入学式でと言うのは別として、絵里と希も本当はもっとアイドルとして、いや、アイドルじゃないにしても、もっと歌って踊りたいと思っていた。

ツバサによって予想外の展開はあったものの、その後入学式は無事に終了した。

すっかりツバサとも打ち解けた絵里と希。

まるで3人とも同じ高校の同級生かのようである。

元μ'sとA-RISEとして、お互いをよく知っているとは言え、今日の再会により3人の中は急速に深まっていったのだった。 式を終えて会場を後にする3人。

3人は有名人と言うことで大学側の計らいもあり、別口より表に出た3人。

ちょうど会場の裏側にあたり、搬出入を行うために道路と直結になっており、そこにはツバサを迎えにこた事務所の車が待機していた。

車の中には優木あんじゅがおり、窓を開けてこちらに向けて手を振っている。

すでにツバサがメールを送っていたらしく、絵里と希と同級生と言う情報はすでにあんじゅにも伝わっていた。

「それじゃ、私はこの後仕事だからまたね。何かあればスマホに連絡してね。日は2人に会えて嬉しかったよ。次は学校で会いましょう。またね」

そう言い残し、ツバサは車に乗り込み、去っていった。

あれだけ騒いで、終始しゃべり続けて、この後は仕事と言うツバサの姿を見て感心する2人であった。

ツバサを見送った2人の背中は、どうしてか哀愁が漂っていた…

続く

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